鈴木ロイ [早稲田4年・FW]

鈴木ロイ

西武ホワイトベアーズ、苫小牧東高、そして早稲田でもキャプテン。「もともとキャプテンをやりたい人間なんです。同学年の中でもリーダーシップをとるように心がけていましたしね」

鈴木ロイ

苫小牧を経て、ホッケーの故郷である東伏見に戻ってきた。「大学に入った時点ではアジアリーグに行く気はなかった。僕の選手としてのゴールは早稲田なんだと思っていました」


「初黒星・慶應戦の敗因は判定ではなく気持ちをコントロールできなかったこと」

——関東大学リーグ戦の1次リーグは7試合全勝で終えました。勝ち点も、1つの欠けもない21点。この成績についてはどう感じていますか。

鈴木 自分たちのホッケーができれば全勝できる。そういうポテンシャルはあるとは思っていたんですけど、運が良かったというのもあると思います。最初(第1戦・9月8日)の慶應戦なんて負け試合だったと思いますし(実際は5-3で勝利)、中央戦(9月29日、3-1)もホッケーの内容としては中央のほうが上でした。そんな中で、いろんな要因が自分たちのほうに向いてくれたのかなとは思っています。

——ただ、運だけで7連勝は無理ですよね。

鈴木 もちろん、そうです。チェッキングをめちゃくちゃ速くしたのが一番ですかね。パックに、すぐ(体を)寄せる。今までの早稲田は体で行かずに見ちゃっている選手が多かったんですけど、今季はパックがある所に素早く寄せるようにして。

——早稲田は1次リーグの7試合すべて、3ピリの得点で相手を上回っていて、8試合目に初めて相手に上回られた。それが10月14日、初黒星を喫した慶應戦(3-4)だったんです。早稲田は陸トレをがっちりやるから、60分間、足が止まらないけれども、慶應も陸トレをガンガンやるチームだから、3ピリになっても運動量が落ちない。番狂わせでも、早稲田の慢心でもなく、慶應が「慶應の試合」をやって勝ったという印象でした。早稲田としたら、テクニック重視のチームよりも、むしろ慶應のほうが自分たちと似ているぶん、やりにくかったのかなと。

鈴木 そうですね。番狂わせではなかったと思います。

——慶應戦の後、早稲田の選手の様子をリンク外で見ていたんですが、さすがに笑っている選手はいなかったけれども、必要以上に落ち込んでいる様子もなく、黙々とクールダウンをしていました。キャプテンとして、どんな言葉をかけたのでしょう。

鈴木 「リーグ戦だから負けることもあるから、深刻に受け止めずに。勝っても負けても試合は続くから」と。それと、「今日の負けは、反則という原因がはっきりしているわけだから、そこを修正して次に挑もう」という話を、さらっとしました。

——確かにあの試合は、早稲田とすればペナルティの判定で納得いかないケースもあったかと思います。もちろん審判の判定は絶対で、尊重されるべきものですが、あの慶應戦では、内藤正樹監督も「判定の基準に合わせられなかったウチが悪い」と話していましたし、選手も試合後に判定への不満を口にしませんでしたね。アイスホッケーの取材をしていると、負けた理由を「審判」にしてしまう監督・選手が他の競技より多く感じるんですが、あの日の早稲田はそれがなかった。

鈴木 慶應戦はその点で反省があって、試合中はそこに気づけなかったんです。試合が終わってからはみんな頭が冷静になっていたんですが、僕もあの試合では3個も反則しちゃって、試合中は審判に詰めかかっていきましたけど、試合が終わってからは「もう一歩、足を動かせたよな」とか、僕もそうだし、みんなもそう感じていた。だから審判の判定がどうこうではなくて、試合中にメンタルをコントロールできなかったところがよくなかったんだなと思います。


「早稲田が勝っている理由は陸トレをちゃんとしているから」

——キャプテンとして心がけていることは。

鈴木 自分は来シーズンからアジアリーグに行くんですが、夏の間、そのチームの練習に乗りに行って、考え方が少し変わったと思うんです。それまでは、けっこう細かいことを気にするキャプテンでしたし、自分で何でもしたい、1から10まで影響力を持ちたいっていう考えが強くて。まあ、それはけっして悪いことではないと思いますが、空回りすることも多かったんです。
で、練習に行ったチームのキャプテンの方が、練習試合のピリオド間に「全部、1人でやりすぎなくていいよ」と言ってくれたんですね。「早稲田だったら、自分で持って行ってシュートを打ってという感じだと思うけど、ここでは自分の役割をこなすだけでいいから」と。それを聞いて、周りをもっと信頼して、自分はシンプルにホッケーを楽しめばいいのかなと思ったんです。実際、春先まではけっこう細かいところまでガミガミ言っていましたし、何にでも口を出すタイプだったんですけど、自分も、周りも、もっと自由にやればいいのかなと。夏合宿以降は氷上練習の声出しでも、意識して楽しくやって、みんなも乗ってきてくれていると思います。

——早稲田、それと慶應の選手は、チームのブランドに強い誇りを持っていると感じます。日本を代表する大学だからというのも当然、あるとは思うんですが、それ以上に毎日の練習が厳しく、それをみんなで乗り越えているから結束力や集中力が高いし、「このチームの看板にかけて下手なことはできない」という意識も強い。

鈴木 僕自身は、そんなにブランドにはこだわりはないんです。春の早慶戦に負けた時も、周りは「先輩たちが築いてきた伝統を壊した」と見たと思うんですが、個人的には、そんなに大ごととは感じていなかった。早稲田の伝統というか、勝っている理由としては、シンプルに「陸トレをちゃんとやっているから」ではないかと思いますね。

——早稲田、慶應は毎シーズンのように春のトーナメントの時点では「今年は厳しい」といわれるんですが、秋にはしっかりチームをつくってくる。早稲田の場合も春は決勝リーグで明治、中央、東洋に3戦全敗で早慶戦も負けてしまったわけですが、そこからどうやって上げていこうと考えたのでしょう。

鈴木 早慶戦が終わると時期的に氷から離れるので、氷上のプレーで解決できることはなかったんですが、秋に向かって強い体、速いプレーができる体をつくっていこうという感じで、選手各々が取り組んでいましたね

——毎日のスケジュールは。

鈴木 朝3時に起きて、バナナを1本食べて、4時から氷上練習(早稲田の寮は、東伏見のリンクから歩いて3分程度)。それが5時半までで、6時からグラウンドで陸トレです。グラウンドの関係で7時までと決められているんですが、ウエートだともっと長く続きます。

——一般学生にとっては、午前3時は起きる時間というよりは床に就く時間ですね

鈴木 こういう生活になって4年目ですが、慣れるということはないんですよね。みんな言っているんですけど、「寝ないで練習に行ったほうが調子がいいんじゃないか」といまだに思いますから(笑)。消灯時間は特に決まってないんですが、夜9時を過ぎると寮の中が静かになってくる。授業の関係で夜7時、8時に寮に戻ってくる人もいますが、9時を過ぎたら寝ていますね。

——リーグ戦の期間も陸トレを継続するというのは、すごく重要ですよね。試合期になるとどうしても氷上がメインになって、陸トレをセーブするチームもありますが、負荷をかけ続けることによって、コンディションをキープするのではなく、選手として「強く」なれる。

鈴木 陸トレをやらないと、コンディションはフラットではなく、むしろ下がっていくと思います。僕らも試合前日はさすがに調整メニューなんですが、調整メニューといっても、短距離系のダッシュとか、他の大学よりも走っていると思います。たとえば日曜の夜に試合があっても、翌朝には陸トレをやりますし、ウエートでしっかり追い込みますね。

——大学や高校アイスホッケーには時折、自滅するチームがあるじゃないですか。そういうチームは必ず、陸トレと私生活に問題があるんです。氷の上じゃないんですよ。これはもう、百パーセントそうなんです。

鈴木 ああ! そうだと思います。陸トレにしてもそうですけど、日ごろの生活面でも、なんでもちゃんとやっているから大崩れしないのかなって思います。


「相手の体にしっかり当たる。それでパックを常に支配する」

——早稲田はゴール前でFWが踏ん張りますよね。今は割とGKの視野から外れる位置に立ってシュートのタイミングでスッとゴール前に入るケースが多いんですが、早稲田はちょっと「昔風」というか。

鈴木 ホッケーという競技自体、今も昔もそんなに変わんないと思っています。戦術はどんどん新しくなっていきますけど、結局、大事なところは変わらないんじゃないかなって。最近、それをつくづく感じます。

——鈴木選手は卒業後にトップリーグに進みますが、どこを評価されたと考えていますか。

鈴木 自分でもスキルプレーヤーではないと思っているので、パックによく絡むこと(が長所)かなと思っています。たとえばセットメイトがルースパックにしてしまった時に、すぐにマイパックにすることが自分の第一の役割だと。パックを持ってからは、シュート力はあるほうだと思うので、シンプルにゴール前に集めることもFWとしての役割ですね。本当はもっとゴールも決めたいんです。今は1つ目ですけど、強くて、速くて、(相手にとって)ウザいプレーを目指してます。春大会の段階では、まだ(トップリーグに行くことが)決まってなくて、実際、それほどいいプレーばかりではなかったんですが、チームの監督さんに「見に来てください」って自分からアプローチしたんです。

——春の大会を見て思ったのは、試合後の円陣の中心で鈴木選手が長めの話をしていて、ここまで円陣が長いチームも珍しいな、ということでした。頭と体が試合モードのうちに話すべきこと、整理すべきことを話しているのが伝わってきて、氷から上がってしまう前のタイミングだからこそ意味があるんだろうなと解釈していたのですが。

鈴木 そこはけっこう、自分でも意識している部分がありますね。試合が終わってから僕が話すタイミングって3回あるんです。試合が終わってからすぐにゴール前でやる円陣。控え室に戻って、監督とコーチがしゃべった後に最後、キャプテンとして一言。それと、着替えてクールダウンをして、それが終わってからみんなで集まって、試合に出ていなかった選手やマネジャーも含めて、明日の予定とか事務確認を含めて話して締めるんです。3回もあるので、僕が大切だと考えていることがちゃんとみんなの心に染み渡るように、何度も何度も話しています。
試合後の円陣は、勝った時であれば、「キーパー、ナイスセーブ」とか、いいプレーをした選手がいれば名前を挙げて褒めるとか。でも、勝ったからといって気持ちは緩められないぞというのは、ユーモアを交えつつ、しっかり言いますね。たとえば秋の1次リーグで明治に勝ちましたけど(9月24日、4-2)、「明治に勝っても他のチームに勝っても、勝ち点は同じだから」と。みんなを楽しませる内容を含めつつ、締めるところは締めるというのを心がけています。

——今季、パックドロップ直後の「イースタートー」をやめましたよね。

鈴木 僕たちは続けてもよかったんですが、スタッフの方に「声を出すよりも目の前のプレーに集中すべき」と言われてやめました。この春は、いろんな意味で体制が変わったんですよ。監督が代わって、コーチが代わって、トレーナーとかも、もちろん選手も学年が入れ替わって。いろんなものが変わった中で「いいスタート」も廃止になった。A(副キャプテン)の矢島(雄吾)とハリデーに相談したら「ま、それもいいんじゃない」と。

——試合前の円陣も特徴的ですね。全員でギュッと体を寄せて、精神的な結束を感じます。最近の円陣は、広い面積を使って個々の世界に入って、最後にスティックで氷をたたくというパターンのチームが多くて、それだと確かにかっこいいんだけど、あんまり円陣の効果がないんじゃないのと思って見ているのですが。

鈴木 NCAAの試合を見ても、試合前の円陣はタイトにやっているチームが多いんです。4年の高橋(寛伎)も「やろうよ」って。集合の時とかも、近くに集めさせますね。なるべく輪を小さく、タイトに。

——なるほど。では最後に、早稲田が2次リーグ、さらに順位決定リーグで勝っていくために必要なことを。

鈴木 「体を使う」ことですね。相手の体に何もせずに素通りしちゃうことが多かったんですが、僕らのスピードがあって、ちゃんと当たれば、相手はもっとイヤだと思うんです。潰しにいかなくていいから、体にしっかり当たる。ノーアクションで(ベンチに)帰ってくることはナシねって、みんなには言っています。「体を使う」ことのもうひとつの意味は、パックを守るということ。早稲田はハンドリングの技術が高いとはいえないと思うんですが、速いチェックに行ってルースパックになった時も、マイパックにするまでに時間がかかるというか、相手が来たらパックを離して…というパターンがよくあって、本来は誰かが行ってマイパックにしないといけない。体を使ってしっかりパックをキープしていこう、ということです。

PROFILE

すずき・ろい
早稲田大学教育学部複合文化学科4年生。FW、レフトハンド、本年度キャプテン。
1996年4月15日生。175㎝・80㎏。東京都出身。世田谷用賀小2年でホッケーを始め、都立小石川中等教育学校を経て北海道・苫小牧東高を経て早稲田へ。お父さんはロシア人、お母さんは日本人のハーフ。「ロイ」は聖書に由来があり、東高校まで背番号61(ロイ)だったが、「早稲田は伝統的に40番くらいまでしかつけちゃいけないらしくて、6と1を逆にしています」

元のページへもどる