9月8日に開幕した関東大学リーグ戦・1部Aは同30日に6校が予選1次リーグを終えた。台風接近により中央-明治が延期になったが、その結果を待たずに早稲田が7戦全勝で首位ターンを決めている。8校が総当たり7試合を戦い、早稲田はすべての試合で勝ち点3(合計21)。つまり延長やGWSにもつれ込んだ試合は1つもない。数字だけを見れば横綱相撲のように見えるが、大学リーグを追いかけているファンの人なら、接戦の連続だったことはご承知のはずだ。

春の時点で、こういう姿は想像できなかった。4月に行われたトーナメントでは上位4校による決勝リーグで全敗。新横浜で行われた慶応との春の定期戦では42年ぶりの敗北を喫するというけっして出足はよくない、というか、かなり悪かった。早稲田は今春にスタッフを一新している。

昨季までコーチだった内藤正樹氏が新監督に、ともに西武鉄道でDFとしてプレーした小堀恭之氏、山崎浩市氏をコーチに迎えた。特にコーチは2人とも日本リーグ出身とあってシステム重視の指導をしているかと思いきや、実際はそうでもないようだ。8月中旬の帯広合宿では、内藤監督いわく「基本の練習しかやってません」。特に重点を置いたのは、パス。スタンディングパス、ランニングパス、時にはパックを使わずにダッシュと、4年生のDFハリデー慈英をして「こういう練習をしたのは中学以来かも」と苦笑する基本的な内容に終始したという。走り負けない足、速いパス。それが60分トータルで効く。正確で速い「パス」と「足」。

実際、この秋の戦いを見ていると、それが実を結んでいるのがよくわかる。特に効果を発揮するのが試合の終盤だ。中盤は相手に押される時間帯があっても、相手の足が落ちる3ピリ、早稲田は7試合すべてでリードを奪っている。ハンドリングでかわすより、まず足を使い、さらに人間の足よりも速いパスで翻弄する。Oゾーンでは、勇気を持ってゴール前に立つ。パックが相手に渡ったら、苦しくてもハリーバック。システムを前面に出したプレーではないが、アイスホッケーを最初に習った時に教わる原点、つまり選手にとって守るべき大切なものを早稲田の選手は表現している。

1次リーグ最後の1週間は、春に敗れている明治、中央、東洋にきっちり借りを返した。印象的だったのは、試合を終えてリンク近くにある合宿所に戻る姿だった。ライバル校に連勝し、顔色はもちろん明るい。しかし、はしゃいでいる選手は1人もいなかった。主将のFW鈴木ロイ(4年)に、まさかの首位ターン…と水を向けると「いえ、まさかじゃないです」。ハリデーも同様に「まさかじゃないです」。もちろん、反応を見るためにあえて「まさか」という言葉を用いたのだが、2人ともに「やるべきことをやってます」と口をそろえた。まだ1回戦が終わっただけと、歯を見せることもなかった。「追われる立場」になっても彼らが自分を見失うことはない。

10月14日から始まる2次リーグは、内藤監督いわく「追われる立場に」となった。選手層の厚み、さらに高校までの実績を見れば、明治、中央、東洋を上回るものは早稲田にはない。道のりは容易ではないだろうが、少なくともこれだけはいえる。1次リーグ全勝ターンは、彼らが取り組む練習に裏付けられたものであり、「勢い」がもたらしたものではない。そして、彼らは取りこぼしをしない。ライバル校が時折やらかす「自滅」は、早稲田というチームに限っては、ない。1次リーグで見せた彼らのプレーと姿勢は、言葉以上にそれをよく示していた。

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