エンプティを除けば実質1点差の接戦。終了のブザーが鳴ると、フリーブレイズのGK畑享和のもとにバックアップの伊藤優人が即座に駆けつけ、労いの言葉をかけた。


第86回全日本選手権・準決勝

2018.12.15 東京都西東京市・ダイドードリンコアイスアリーナ

フリーブレイズ 1(0-0、1-2、0-1)3 アイスバックス

アジアリーグの国内チームは4つ。限られた相手と何度も戦えば、互いの手の内を知り尽くし、戦いの密度が濃くなる。ゴールすることが容易ではなくなり、おのずと守りに重点が置かれることでロースコアの接戦が増えてくる。準決勝第1試合も、その傾向通りの展開になった。

2ピリ2分にフリーブレイズが先制ゴール…と思われたが、ビデオ判定の末に「ノーゴール」。4分後、真の先制弾を決めたのはアイスバックスだった。FW寺尾勇利のゴール左からのアクロスに、FWとして出場のDF田中健太郎が泥くさく押し込んで1-0。しかし1分後、フリーブレイズはFW田中遼がゴール左からバックハンドでねじ込み同点とする。その後もフリーブレイズはPP、しかもそのうち44秒間は5人対3人というチャンスを得るが、スコアリングには至らず。逆にペナルティ明けの13分、アイスバックスはFWヨーナス・アランネが右からのミドルシュートを決めて勝ち越す。結局、この1点が事実上の決勝ゴールとなり、3ピリ残り6秒にエンプティで3点目を加えてとどめを刺した。

最終日を待たずに連覇の可能性が消えたフリーブレイズ・若林クリス監督は「ゲームプラン通り、ロースコアにもっていけただけに悔しい負けです。惜しいチャンスをつくりながら、パス出し、レシーブの精度が低かったのと、リンクコンディションの影響でパックが立ったりして得点につながらなかった。フリーブレイズはこれまで全日本選手権ですべてメダルを取っているので、明日もいいゲームをしてメダルを取って帰りたい」と、笑みを交えながらも言葉の端々に悔しさをにじませた。

一方のアイスバックスは、ビッグゲームにおいても主導権を握れるチームであることを証明した。2ピリ5分に同点に追いつかれ、なお反則を連発しながら、勝負を左右する踏ん張りどころを踏ん張りきった。3ピリ18分すぎ、フリーブレイズがGKを上げた時も、パックを奪ったFW古橋真来があえてシュートを打たずにコーナーに流れ、時間を消費。焦ることも慌てることもない、堂々の試合巧者ぶりだった。

試合を通じて両チームともに得点のにおいが薄いことが気になった。前述の通り、試合を重ねれば重ねるほど「穴」は小さくなり、いきおいロースコアの戦いになっていくにしても、トップリーグチームにおける得点の少なさ、スコアリングの乏しさは、そのまま国際大会での結果に現れている。

 


日本製紙 1(0-2、1-0、0-2)4 王子

開幕前日の公式練習でトップリーグ4チーム中、もっともハイテンションだったのが王子。この大会ではエースFWでキャプテンの久慈修平をケガで欠いているが、その危機感を結束力に転化している。

1ピリ5分、5人対3人の好機を得た王子は、FWドミニク・フォジェがゴール右から正面に持ち込み、良い角度をつくってから先制のスコア。9分にはDゾーンから一体となった反転速攻から、最後はFW中屋敷侑史がシュートリバウンドをバックハンドでたたいて2対0とする。前日の会見で「ここまでのアジアリーグでの戦いから見ても、クレインズさんを相手にウチは2点を取るのが限界」というMAX値に、序盤にして早くも到達する。2ピリ7分、日本製紙が反撃の1点目。王子はそこから、ペナルティもあってなかなか追加点を奪えない。

3ピリ、ベテランFWが流れを引き寄せた。王子はペナルティをしのぎ切った3分、百目木政人がラップアラウンドからゴール右で向き直ってからローショットを決めて待望の3点目。18分にはエンプティで4点目を奪い、アジアリーグで首位を走るライバルに引導を渡した。

敗れた日本製紙・小林弘明監督は「今日の王子さんはウチのブレークアウトに対するプレッシャーが速かった。そこをかわしてもニュートラルゾーンのトラップと、2段階でやられた」と唇をかんだ。FWがOゾーン、またはOゾーンに近い位置でプレッシャーをかけ続けた王子の守りに、日本製紙の「らしさ」は完全に封じられた。

1失点のみで勝利に導いた王子GK成澤優太は、「去年の全日本は1失点で負けて悔しい思いをした。僕はこれまでチームが優勝した瞬間に氷の上にいたことがないので、今回はそのチャンスだと思ってワクワクしています」。自らドアマンを買って出ている久慈は、「チームのために少しでもサポートしたい。試合に出ていなくても、気持ちは他の選手と同じだと思っています」。決勝の舞台も、エースがベンチから外れる可能性は高い。それでも、その事態をプラスに変換して、王子は2年ぶりの優勝に向けて2年前と同じ相手にぶつかる。

この大会ではドアマンとして貢献している久慈。献身的な姿は、氷に下りなくてもチームの強力な戦力になっている。

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