大学ホッケーマンにとって最大のターゲット、91回目のインカレが目前に迫っている。中央は12月20日に苫小牧入り。秋のリーグ戦は4位だったが、順位決定リーグは2勝1敗。フィンランド3部リーグでプレーしていたDF蓑島圭悟(4年)が11月下旬に復帰してからは、スピーディーにパックをさばき、短時間で前につなぐホッケーで、一時期の不振から完全に脱却した。いい感触を得てインカレに臨めそうだ。

中央の4年生は7人。そのうち高校までの18年間をこの街で過ごした唯一の選手が、ゴーリーの金子将太朗だ。「親はもちろんですし、小学校時代から今までかかわってきてくれた人たちも見に来てくれるはず。初めてホッケーを見る人にも、中央のキーパーは金子将太朗なんだというのを印象づけたいです」

順位決定リーグに入って笑顔が戻ったものの、1次リーグ後半から2次リーグまで、気持ちも表情もなかなか晴れなかった。「成績だけでいうと、4年間で最悪の秋リーグです。4位というのも僕が入学してからは一番悪い順位ですし」。勝てなかった時期、中央は特にDゾーンでパックを奪われる場面が多く、金子はシュートを浴びまくった。童顔をゆがませて攻撃に耐える姿は、一部のファンから「ひとり防弾少年団」と例えられたほどだ。だからこそ、Dゾーンでプレーする時間が目に見えて短くなったチームの変化を誰より強く感じている。「蓑島が戻ってきてからのプラスはやっぱり大きいです。彼自身の存在感も当然ありますし、彼が加わったことで周りの選手もよくなった。そういう流れに自分も乗れたらなって思います」

大学4年目の今季途中まで、トップリーグへの思いが強かった。しかし、声がかからなかったことで方向転換、故郷に戻って就職する。「アジアリーグに行けなくなって自分の中で変わった面があるんです。8月の夏合宿中に公務員の試験を受けて、秋リーグに入ってから合格通知をもらったんですが、それまでは、ホッケーの道に進めなければニートだ、アジアリーグに拾ってもらわなければ終わりなんだという危機感があったのが、それが自分の中でなくなったんです。安心しちゃったというか」

駒大苫小牧高でも中央でも、1年目からスターターを務めてきた。加えて、女子チームの練習に1人で出かけるほど努力を重ねてきた。サイズの乏しさがいわれてきたが、食事とトレーニングによって170㎝台に届かせた。「でも、選手をセレクトする立場の人からは、最後まで評価されなかったと思います。ただ、これはプロに行かなくなった今だからいえることですが、そういう人たちに評価されなくても、自分の周りにいる人に評価されて、信頼してもらえればそれでいいのかなって。今も、中央のGKは小野田(拓人・王子)という人は多いと思います。でも、中央のゴーリーは金子だよって言ってもらえるような、そんな選手になりたい。中央の先輩には苫小牧に住んでいる人が多いので、後輩が活躍する姿を見るのは楽しいと思いますし、お客さんに一生懸命やっているところを見てもらって、何かを感じさせることができればいいなって思っています」

金子には、こだわってきたものがある。学生アスリートであるという誇りだ。「スポーツの中で、学生スポーツが一番力があると思うんです。たとえば野球でも、もちろんプロもありますけど、高校生がやっている甲子園のほうが多くの人を感動させることがある。学生スポーツでしか感じることのできないものが、絶対にあると思うんです。だから僕も、最後のインカレで、見ている誰もが感動できる試合をしたい」

高校・大学で積み上げた実績を過小評価された無念はある。それでも、この苫小牧インカレで、それと決別できるかもしれない。「大学の1年目に3冠を経験して、4年目の秋リーグでどん底を味わった。全部経験できたことも、自分の人生にとってよかったのかなって。最後のインカレで勝てれば、中央に来てよかったと思える。絶対にそう思います」

1年前の12月。八戸インカレの準決勝で敗れ、当時4年生の坂本颯(ダイナックス)が立ち上がれないのを見て、そばで寄り添った選手がいる。駒澤、中央で、常に1学年下の後輩として慕ってきた金子だ。悲痛な思いを八戸で味わい、1年後に苫小牧で集大成の大会を迎えるのは高校時代と同じ。駒澤3年時のように「優勝」で終わりたい。金子はそう考えている。

PROFILE

かねこ・しょうたろう

中央大学法学部法律学科4年。GK。1997年1月5日生まれ。苫小牧ピノキオエンゼル幼稚園でホッケーを始め、錦岡小、凌雲中、駒大苫小牧高を経て中央へ。アイドル好きとして知られ、「今の一押しは乃木坂46の衛藤美彩。癒されますね。今までイベントに行ったことがなかったんですが、1月20日に初参戦するんです。苫小牧に帰ったらアイドルの手を触ることもないと思うので」

昨季の八戸インカレ、東洋に2-4で敗れて氷上にたたずむ坂本に寄り添う金子。坂本もまた、2年連続でリーグの得点・アシスト・ポイント王に輝きながら、トップリーグから声がかからなかった。

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