失うもののない、しかし「覚悟」を決めて臨んだ中央との一戦に勝利し、笑顔の法政。順位決定リーグはノープレッシャーで臨めるだけに、さらなる嵐を起こす可能性も。


秩父宮杯 第67回関東大学選手権Aグループ準々決勝

2019.4.13 東京都西東京市・ダイドードリンコアイスアリーナ

法政 5(2-1、2-1、0-2、PSS1-0)4 中央

それを「試合」と人は呼ぶ。戦いであり、勝負でもあり、しかし「試し合い」なのだと。では、この試合で法政大学と中央大学は何を試されたのか。深く考えさせられる一戦になった。

立ち上がり。優勝候補に挙げられる中央は、開始22秒でペナルティを犯すも、2分15秒、FW齊藤大知(4年)がDゾーンから単独でゴール前に運んで先制ゴール。PKでの先取点はいかにも中央であり、PPで点を失う法政もまた、いかにも昨シーズンまでの法政だった。

しかし、法政がこの一戦にかける思いは並ではなかった。PPの10分58秒、スロット左のDF松井洸(4年)から正面のFW土田啓太(3年)へ、さらにゴール右に詰めたキャプテン、FW小西遼(4年)へと渡って同点ゴール。32秒後にはシュートリバウンドをFW南陽向(3年)が正面から押し込み、連続得点で逆転する。第2ピリオドに入っても5分10秒、DF福島勇啓(4年)がゴール裏から右へと持ちあがり、角度のないところからシュートを決めて3-1。場内に「もしかしたら」の空気が漂い始める。

13分過ぎには、法政のゴールと思われたシーンが2度。いずれもノーゴール判定で、法政とすれば気持ちが萎えてもおかしくなかったが、16分41秒、前週の専修戦でハットトリックを決めた土田が、南とのワンツーを経てゴール前に詰め、パスアクロスを合わせて4点目。18分に2点目を失ったものの、4-2でこのピリオドを終える。

2点リードで迎える最終ピリオド。法政は、気の緩みを伴う危険な点差の「わな」にハマる。開始15秒にPPを得て、法政とすればここで5点目を奪って試合を決めてしまいたかったが、どうにも決めきれない。逆に9分、16分と、中央が連続ゴール。昨季までならここで法政が一気に崩れて、中央が逆転してというシナリオだっただろう。それでもこの日は、そうならなかった。

3ピリ終了のブザーが鳴り、試合の行方はPS戦へ。1人目は双方とも失敗のあと、最初にネットを揺らしたのは法政のキャプテン小西だった。ゴール右にふくらんで、リストを生かしたバックハンドショット。結局、これが両チーム通じて唯一のゴールになった。

最後の一線を死守した小西の踏ん張り

法政が危うい一線をかろうじて守り続け、逆転を許さなかった背景には、キャプテン小西ら4年生の踏ん張りがあった。「3月5日に新チームの練習が始まって、小西はずいぶん部員にキツいことを言ってきました。だからアイツは必死だったと思います」と松井。それを受けて小西は「中央に今日勝たなければ、これまでやってきたことの意味はなかったと後輩に思われてもしょうがないし、口先だけのキャプテンだといわれていたでしょう。とにかく、やるしかなかった。今は正直、うれしいです」と頬を緩めた。

何ピリオドの何分か定かではないが、こんなシーンがあった。小西がシュートを打ち、コーナーまで弾かれたパックを小西自らが拾ったのだ。昨季は股関節を痛めた影響で思うように走れず、トレーニング不足から9キロ太った。今、4年目にして全盛期を迎えているかのようだ。「ウチと中央では、誰が見たって中央が上です。僕もそう思いますから。でも、僕は法政を変えたかったし、そのためには今日、勝つしかなかった」。小西は卒業後にトップリーグでホッケーを続ける気持ちはない。いわば競技として最後となるシーズンのすべてを、小さいころから続けてきたアイスホッケーのすべてを、この一戦にぶつけていた。3年生の南と土田がまるでインカレ決勝で得点したかのように喜んだのは、そんな4年生に感化された部分もあったのだろう。

一方の中央。強力な1年生DFを補強、キャプテンのFW阿部翼(4年)を中心にムードもよく、コンディションも上々だっただけに、予想だにしない敗戦だった。勝敗が決した氷上、そして控え室から出てきた選手に、顔色はなかった。上位4校による順位決定リーグを前に、まさか優勝への道が絶たれるとは。この日アリーナを訪れた観客の大半もそう思ったはずだ。「雰囲気も力も、去年より上。このチームで勝てなかったのはショックです」。八戸了監督は肩を落とした。

何が勝敗を分けたのか。あえていうなら、それは、目の前の「この一戦」への覚悟ではなかったか。すべてにおいて格上の中央に対し、法政がまさっていたのは、4月13日17時15分から始まる「この一戦」にかける気持ち、その一点のみだったように思える。法政にとって、この試合は「決勝」だった。3月の練習再開から、この試合に勝つために時間を費やしてきた。しかし中央にとっては、この法政戦は決勝ではなかった。彼らのライバルは明治であり、東洋だからだ。

法政としては、課題もはっきり見えた試合だった。とりわけ2点リードで迎えた3ピリの入りは冷徹さを欠いた。ネジを締め、気合を入れ直してリンクに出てきた中央に比べ、いかにものんびりしていた。「3ピリに追いつかれるところが、まだ去年までの法政です。順位決定リーグまでの1週間、もう一度、厳しくいかないと」と小西は気を引き締める。一方で、中央にとっては5-8位決定トーナメントは気持ちの持っていき方が難しい。「今はちょっと、何も考えられないです」。そう話す選手がいたが、それが正直なところだろう。

それでもやはり、「試される」日々は続いていく。試合を迎えるまでの、何の変哲もなく始まった今日をどう過ごすかも含めて。この4月13日の試合を、法政は、中央は、どのように考え、生かしていくのか。それはきっと、インカレの最終試合、最終ピリオドが終わった瞬間に明らかになる。

まさかの敗戦にうつむく中央。「これがインカレでなくてよかった」と切り替え、試合の教訓を次戦以降に生かしていきたい。

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