3月25日に行われた卒業式をもって中央大学を卒業していった2018-2019シーズンの4年生。左からFW沖澤拡、キャプテンのFW佐藤優樹、DF渡邊謙太、GK金子将太朗、FW高見悠斗、FW矢野倫太朗、DF蓑島圭悟。


4月1日。ほんの少し前までリンクにいた4年生ホッケーマンも、各地で新しい一歩を踏み出したことだろう。「年年歳歳花相似たり」。それでも、チームと人は毎年、新しい時間を積み重ねる。4月6日には、新1年生を迎えて関東大学選手権が開幕。その前に、どことも似ていない濃密なシーズンを送った、昨季の中央大学の4年生7人を振り返ってみたい。

個人の意思、希望が反映される学風

泣いていた。この日が大学のユニフォームを着て最後の試合になる4年生はもちろん、3年生も、1、2年生も泣いていた。12月29日、インカレ最終日。前日の準決勝で東洋大学に敗れた中央大学は、学生アイスホッケー最大のタイトルを逃し、試合が終わってもなかなかリンクから去ることができなかった。「氷から上がった瞬間に僕たちの4年間が終わるんだと思うと…」。中央大学のキャプテン佐藤優樹はそう言って涙を拭いたが、翌12月29日に行われた3位決定戦で彼らが流した涙の意味は違っていた。試合は4-0の完封勝利、4つのゴールすべてに4年生が絡んでいた。2カ月半前の冷たい雨の夜を思えば、あのチームがよくここまできたなと思えてならなかった。

関東の大学アイスホッケーには、年間3つのビッグタイトルがある。そのうち4月の選手権(トーナメント後に決勝リーグ)、9~11月のリーグ戦は関東の大学同士、12月のインカレは全国の大学が集まり、日本一をかけて争う。高校までのトップ選手が多く集まる関東の大会で優勝することは事実上の日本一といっていいのだが、各大学の伝統として、インカレ優勝が年間最大の目標になっている。中央は、2018ー2019シーズン最初の関東大学選手権で明治と2ピリまで2-2、しかし3ピリに3連続失点して2位に終わっている。明治を相手にどう戦い、勝利するか。中央にとっては、それがシーズンを通じて最大のテーマだったといっていい。

そのチームに8月、ある出来事が持ち上がった。キャプテンのDF蓑島圭悟が単身フィンランドに渡り、現地の3部リーグで戦うことになったのだ。帰国予定は11月中旬。つまり秋の1次、2次リーグには、キャプテンが試合に出ないということだ。

関東の強豪校の中でも、中央は独特の空気を持つチームだ。個人の考え、意思が反映されやすい、いってみれば「大学っぽい」のだ。たとえばこの2月にDF小川翔太らが自費でインドにアイスホッケーを教えに行ったり、FW徳光陸が英語の勉強のためカナダに渡るなど、部活動を大事にした上で「これをやってみたい」という個人の意思を行動に反映させやすい。大学とは本来、自分を磨く場所であり、学生と親はそのために、ときにはお金を借りてまで学費を払っている。だから学生が「これをやってみたい」と思ったら、それが人の道に反することでなければ、大学はそれを叶えるための最大限のサポートをすべきなのだが、中央大学はそれを実現しやすい学風を持っている。

とはいえ、キャプテンの突然の行動は、チーム内に波紋を読んだ。蓑島とすれば、「このままいったら秋(リーグ)もインカレも獲れないなあって。チームを変えるには大きい変化を起こさなきゃいけないと思っていて、海外のホッケーを経験するという行動を起こせるのは自分しかいなかった。インカレで勝つためには、それまでに行くしか時間がなかったんです」という背景があってのことだったが、蓑島の行動を「無責任だ」と非難する声も少なからずあった。

※詳細は1月14日・アイスポ 蓑島圭悟インタビューに掲載。

https://blues-hockey.net/update/2019/01/post-46.html

リーダー不在が浮き彫りになった10・10明治戦

9月、リーグ戦が開幕。チームに起こった小さくない嵐は、それでも危機感となって良い循環をもたらした。「オレたちだけでやれるんだぞって。意地というか、むしろまとまりの良さを感じます」。そんな言葉が取材ノートに残っている。それを裏付けるように中央は4連勝スタート。しかし、5戦目の東洋戦にGWSで敗れてから歯車が狂い始める。東洋、早稲田戦は、ともに先制しながら逆転負け。そして10月10日、台風接近により延期となった明治との1次リーグ最終戦で、チームに起きている異常が表出する。

1ピリに明治に先制され、2ピリも2失点。しかし、3ピリに入っても反撃の意志が伝わってこない。控え室での出来事なので証言をつなぎ合わせることしかできないが、ミスを補い合うはずのラインメイト同士、あるいは学年間の亀裂が、試合中に現れた。チームの足並みがそろわなければ、明治に伍することはできない。試合は1-7の大敗。スコアもそうだが、試合を通じて「次」が見えてこなかったことがより深刻だった。みんなで一生懸命やる。それがチームフィロソフィーだった中央が、らしさを失った。このチームはどうなっていくのだろう。インカレが終わった時、心から泣くことができるのだろうか。10月10日夜、雨まじりの強風は、中央のチーム状態を暗示しているようでもあった。

とりわけ苦しい思いを抱えていたのは当時の4年生、蓑島に代わってCマークをつけることになった佐藤だ。北海高校でもキャプテンを務め、リーダーとしてのキャラクターを持っているが、佐藤自身、リーグ序盤はケガでベンチを外れた(代わりのCマークはFW矢野倫太朗)。チームをまとめる立場でありながら、試合で引っ張ることができない。それが佐藤の苦悩に輪をかけた。

明治戦後、チーム内の足並みはそろわなかったが、それでも佐藤はチームのまとめ役という務めから逃げなかった。何が起きても、試合が終わればまた同じ屋根の下で過ごさなくてはならない。わだかまりを持ち越してもプラスになることはなく、問題から逃げていたら、いつまでたっても戦う集団には戻れないからだ。「ある試合で、違う学年の選手同士でちょっとした問題が起きたのですが、当事者の3人を呼んで1人ずつ言い分を聞きました。それを踏まえて、次は3人で話し合え、と。考え方は人それぞれ違います。大事なのは、それを言葉にして相手に伝えることです。陰で何を言っても解決しない。簡単なことではないですけど、ちゃんと向き合わなければ解決しないと思ったんです」。2次リーグ、佐藤はまだケガが完治していない段階で戦列に復帰した。その2次リーグで、中央は5勝2敗。1次リーグで大敗した明治との試合は、残り10分まで3-3だったが、そこからエンプティを含めて2点を失い、またしても勝てなかった。

早稲田、明治、東洋との4校総当たりで優勝を決める順位決定リーグを前に、中央の優勝の可能性は消えた。そして、そのタイミングで彼が戻ってきた。2カ月半、フィンランドでプレーした蓑島がチームに復帰したのだ。(後編につづく)

10月10日の明治戦は1-7で大敗。この後のチームの浮上を予感させるものを何ひとつ示せないまま、選手は終了のブザーを聞いた。

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