秩父宮杯 第67回関東大学選手権Aグループ決勝リーグ

2019.4.29 東京都西東京市・ダイドードリンコアイスアリーナ

東洋(3勝0敗・勝ち点9) 3(1-0、1-1、1-0)1 法政(1勝2敗・勝ち点3)

両チームともに、成長の跡を観客に示す試合になった。先制したのは、決勝リーグに進んだ4校で唯一、2連勝の東洋。第1ピリオド7分、PPのチャンスを生かしてFW武部虎太朗(3年)が決め、2011年秋のリーグ戦以来の優勝を引き寄せる。

東洋はここまでの5試合、常に相手より先にゴールを奪っている。しかも、そこからのパターンも決まっていた。先制点を奪った勢いのまま2点目を加え、優位を保ったまま時計を進めていくのだ。しかし、この法政戦はそうではなかった。第2ピリオド1分、この春はゴールを決めまくった法政FW土田啓太(3年)が、東洋DFのプレッシャーに遭いながらも同点のスコア。東洋としては、この大会で初めて「同点」に追いつかれる状況になった。

先制すれば強いが、逆に、リードを奪えない状況下では案外もろいのがこれまでの東洋だった。昨年末のインカレ。東洋は準決勝で中央を下し、意気揚々と決勝に臨みながら、1ピリに先制され2ピリに2点を失うと、反撃の気配を感じさせず0-6で大敗した。勢いに乗れば手がつけられないが、苦境に陥ると跳ね返せない。それが、ここ数年の東洋のイメージだった。

しかしこの日の東洋は、これまでとは違っていた。9分、FW久米誠斗(2年)のシュートリバウンドをFW猪狩大智(3年)が左隅に押し込み、勝ち越しの2点目。第3ピリオド1分には、ペナルティボックスから出たばかりのDF武部太輝(1年)が、自陣ゴール前からの長いパスを受けて3点目を奪う。14反則というのも、らしいといえばらしいが、すべてのPKで得点を許さず、10年ぶり春大会優勝を告げるブザーを聞いた。

鈴木貴人監督は「6年目にして(監督就任からは7年目、出場辞退を終えてシーズンの全大会に出るようになってから6年目)初めての優勝。正直、長かったです」。今季は選手24人と少ないながらも「みんなでフィジカルを鍛え、コンディションがよかったのが最大の勝因」と喜んだ。

「コンディションが勝因」とは、これまでの大学アイスホッケーにおいて、ありそうでなかった言葉だ。昨季まで2年連続で2冠を達成した明治に代表されるように、大学アイスホッケーの世界は、選手の顔ぶれ、名前がモノをいってきた。U20代表が何人いるから、うまい選手が何人いるからあのチームは強いというのが、大学における定説だったのだ。

今季の東洋は、確かにタレントはいるものの、それ以上にチームとして「正しい努力」を積んできた。鈴木監督はこう話す。「アイスホッケー先進国は、だいたい9月にシーズンが始まり、翌年の3月まで続きます。ところが日本の大学は、12月のインカレが終わると練習を中断してしまう。ウチはあえて世界基準でトレーニングをしようと思いました。インカレが終わってもオフではないんだと。2月に東京に残って練習する選手もいたし、新1年生には(1月の)インターハイが終わってからもこういうトレーニングをするようにと指導しました。3月の合宿が始まる時点でみんな体ができていて、そこからフィジカルとコンディションをさらに上げていくことができました」

1つ目のウイングを務め、ベスト6に輝いたFW所正樹(4年)は、「春合宿はとにかくキツい、その印象しかありません。朝5時、6時に起きて、氷上、ウエート、陸トレ、氷上と、息を抜くヒマがないんです」。逆にいえば、体力があったからこそ厳しい練習を乗り越えることができ、それでさらに彼らは力を伸ばしたともいえるだろう。他の大学がオフを過ごしている間、東洋は着々と成長曲線を描いていたのだ。

コンディションの良さは、ケガ人の少なさにも表れていた。昨秋のリーグ戦は9月の開幕から負傷者が相次ぎ、11月下旬の閉幕まで、ベストのセット組みができたことは一度もなかった。若干の入れ替えはあったものの、この春はほぼセットが固定され、長く戦列を離れた選手はいなかった。大学アイスホッケーは長年、高校よりも練習環境が劣るといわれてきたが、東洋の優勝は大学に新しい時代が来ていることを示している。

この試合に敗れた法政は、1勝2敗で並んだ3チーム間の得失点差により、4位で大会を終えた。予選トーナメントで中央を、さらに決勝リーグでも明治を破り、この大会で最大級の注目を浴びたが、残念だったのは決勝リーグ初戦の明治戦の後、チームにインフルエンザが流行、練習も百パーセントではできなかったことだ。特に27日の早稲田戦は出足からおとなしいプレーに終始し、見ていて首を傾げた人もいるだろう。大会最終日まで優勝への望みがあるのも法政にとっては久々で、東洋戦では最後まで「戦う」姿勢を見せた。キャプテンのFW小西遼(4年)は、「法政は変わったなと、今日見に来てくれた人に思ってもらえたと思います。でも、これで油断して秋に勝てなかったら、法政はやっぱり変わっていなかったと言われてしまう。4位に終わってみんな悔しかったと思いますが、そういう悔しさを経験できたことがよかった。変わったけど勝てなかった、まだ差があるんだというのを忘れずに、秋に向けてやっていきます」と前向きだった。

東洋が法政に勝ったことで、最終戦を前に早稲田優勝の可能性は消えた。だからなのか、早稲田の戦いぶりは、決勝リーグの東洋戦、法政戦とは違っていた。明治にリードを奪われ、あっさりとした試合に終始した。この日が大学最後の公式戦となったDFハリデー慈英(4年)は、「目の前で東洋が優勝を決めたこともあったし、明治に負けても4点差つけられなければ2位になれるという状況もあって、今日はチーム全体が気持ち的に戦っていなかった」。内藤正樹監督も「まだチームとして去年のレベルに達していない。このオフに体力づくりをして、最後まで走れる運動量をつけたい」と課題を挙げた。決勝リーグの東洋戦は、1ピリと3ピリ出足で連続失点を喫し、それが優勝を逃すことにつながった。「勝つためには、メンタルを自分たちでコントロールしないと」(内藤監督)。それもまた、体力をつけることで可能になるだろう。

決勝リーグ2連敗から、最終戦でやっと白星を手にした明治。2年連続3冠という実績からみれば、3位は満足できる結果ではないものの、早稲田戦の勝利は大きな意味があった。「明治にとって、今日は消化試合ではありません。このチームで、最後に勝って大会を終わりたかった。これで勝ち方を思い出したはずだし、1年生は大学での勝ち方がわかったと思います。シーズンの中でも貴重な1勝です」とGK磯部裕次郎キャプテン(4年)。5月には新しいトレーナーのもと、フィジカルの強化を図っていく。「もう強いメイジではなく、チャレンジャーの立場です。体を使って、シンプルに。チームのためのプレーをしていきたい」。それが現実になった時に、これまでとは違う、しかし新しい強さを備えた明治が見られるはずだ。

元のページへもどる