こんにちは。中央大学でもブルーズでも背番号28のDF、小川翔太です。神奈川県横浜市出身、高校時代は宮城・東北高校でプレーし、現在は中央大学総合政策学部の3年生です。早いもので、留学生活も残すところ2週間となりました。まだまだ吸収できることはたくさんあると思いますので、最後までいろいろと学びながらアメリカでの生活を楽しみたいと思います。

今回の(今回も?)レポートは長いです。まず最初に、2度目となるカナダ・バンクーバーへのスモールトリップについて書きたいと思います。

今回も、高校時代にお世話になったホストファミリーの家に滞在させてもらいました。サマーバケーション期間ということで、チェコのホッケープレーヤーが滞在しており、海外のホッケー事情について聞くことができました。

18歳の彼は1年前にアメリカに渡り、NAHL(North American Hockey League)でプレーしています。前回は、NHLにドラフトされながら大学に進む人がいることに驚かされましたが、今回は、NCAAでプレーせずにプロとしてプレーしながら大学に通う人がいることに驚かされました。日本にいるとスポーツか勉強かどちらかに絞るという思考になりがちですが、北米にはそういう概念はないようです。

彼と、ホストファミリーの息子は、常にさまざまなリーグのスカウトの目の前でプレーし、「ドラフト」と隣り合わせの毎日であることもよくわかりました。日本ではそういう緊張感の中でプレーする機会は少ないですし、選手のレベルごとにリーグが構成されているわけでもありません。お金をかければ良い指導を受けられ、環境の整った中でプレーでき、レベルアップすれば年代やレベルに合わせたジュニアリーグで戦う機会があり、チャンスをつかめばプロとしてプレーできる。とても夢があり、うらやましいことです。

今回の旅の一番の目的は、スケーティングをメインに指導しているDusan Benickyさんとの再会でした。Dusanさんはチェコスロバキアの出身で、ボストン・ブルーインズのChara選手など、多くのNHLerを指導しています。1998年の長野オリンピックではチェコのコーチとして金メダルに輝いている有名な方で、4年前、縁あって指導していただき、今回もどうしても会いたかったのです。

Dusanさんはアウトエッジの使い方の指導がとても上手で、多くの練習メニューを持っています。この日は、以前に教えてもらったメニューのフォームの確認をしてもらい、氷上で数人のプレーヤーと練習を行いました。練習メニューは「キツい」というより「難しい」イメージ。氷上練習は、かつてNHL、現在はKHLでプレーしているGilbert選手、前述したチェコの選手、スロバキアの選手2人と行いました。KHLerのGilbert選手は、難しいメニューにハンドリングの要素を自主的にプラスして、さすがだなと思いました。以前、蓑島圭悟さんに教わったことですが、決められた練習に、自分でどれだけ要素を付け加えて実戦に近づけるかが大事なのだとあらためて実感しました。

話は変わり、先日はダウンタウンで行われた「プライドパレード」を見に行きました。LGBTなどの様々な偏見に対し、彼ら彼女らの人権の平等を主張するものです。警察やプロスポーツチームなど様々な機関や団体が全面的にバックアップしていて、NHLのロゴが虹色になったり、選手が虹色のテープを巻いていたので、ご存知の方も多いと思います。実際にパレードを見ると、性別や偏見など関係なしに生活を心の底から楽しもうとする人と、それを肯定する人の多さに驚きます。こういった動きもアメリカが最先端なのでしょう。誰もが幸せに暮らすことができる社会が、日本にも、他の国にも整っていくことを願います。

続いて、シアトルでの生活について書きたいと思います。初回の日誌にも書いたように、EFの教室も寮も大学の施設を利用しているため、平日のほとんどの時間をキャンパス内で過ごしています。オリンピアの町まではバスで15分程度ですが、これといって用事もないので、それほど行く機会はありません。

食事は学食を利用します。寮費に食費が含まれているため、金曜のDinner以外、平日はすべて学食で食べることができます。ただ、ピザやハンバーガーなど同じものしか出ない上に脂っこく、こちらの学生でさえTerribleと言っています。初日のピザハプニングの件もあり、3日目には食べるものがなくなりました。それでも、滞在が長くなるにつれてバイキング形式で何を選べばおいしく食べられるのか、飽きずに脂肪も蓄えずに済むのかがわかってきます。現在は、朝食のオーダーメイドのオムレツやヨーグルトが楽しみになっています。

この食生活に慣れるまでに2~3週間を要しました。一番つらかった1週目の金曜は、オリンピアのダウンタウンに韓国料理を食べに行きました。涙が出るほどおいしかったのは、忘れられません。2月に行ったインドとの違いは、アメリカには韓国料理や中華料理、日本食など多くのレストランがあることで、週1度、慣れ親しんだものを食べられるので、気持ちが少し楽になります。今も日本食を食べたいことに変わりはありませんが、日々の食事が苦ではなくなったので、メキシコ人の友達とメキシコ料理を食べに行ったり、逆に台湾人の友達とラーメンを食べに行ったり、韓国人の自炊のおすそ分けをいただいています。

次は、授業について。基本的に授業は午前か午後にまとめられており、90分の授業が1日に2~3コマあります。私は滞在期間が3カ月弱でESTAで滞在可能な日数だったので、学生ビザを取らず授業を受けています。それでも、ESTAでは1週間で受けられる授業時間に上限が設けられているため、他の人より週に2コマ少ない時間割になっています。

90分の授業といっても、普段大学で受ける90分の授業の半分くらいの時間に感じます。参加型の授業で、楽しく学ぶことができるからでしょう。授業はすべて英語ですが、難しい単語があれば簡単な単語に置き換えて説明してくれますし、授業時間外でも質問に答えてくれます。日本でも、わからないままやり過ごすより、質問して解決するほうが良しとされていますが、それを実現しやすい環境が整っています。このような授業ができるのは、少人数制というのも理由でしょう。

EFの授業は20人弱の生徒で行われるので、必然的に先生との距離が近くなります。クラスはレベル別に分けられ、基本的に全部の授業が同じようなメンバーになり、アットホームな感じで発言もしやすいです。クラスメイトはコロンビア人、韓国人、フランス人、台湾人、中国人、サウジアラビア人などで、それぞれ授業への取り組み方も変わっていて面白いです。授業が始まってから歯を磨きに行く人がいたり、授業開始時間になっているのに気にせず10分以上遅刻して悠々と歩いてくる人がいたり。日本人の真面目さがよくわかります。先生も、日本人の生徒を信用してくれているように思います。

こういう環境だと、それぞれの国民性が見えてきてとても面白いです。入寮の日が同じでクラスも同じだったことでコロンビア人の兄弟と行動することが多いのですが、日本人とはまったく違うので、ストレスを感じつつも楽しめています。国民性という言葉は偏見につながるという意見もありますが、誰にでも、少なからずあるものだと思います。コロンビア人をはじめ南米の生徒は、一言でいえば「協調」。友達をとても大事にします。誰かが遅れた時は来るまで待ち、挨拶では人それぞれにグータッチをします。話すのが大好きで、歩いているときも大人数で話します。そのため、歩くのがとても遅いです。東京だったら確実に玉突き事故でしょう。一方で、いつも視点が自分たち中心のようにも感じます。もちろん、どこの国の人も愛国心が強いですが、その中でも特に強いかもしれません。

その点、アメリカ人はそれぞれを尊重する傾向があるように思います。一言で言えば「個性」。私が一緒にいて過ごしやすいのはアメリカ人です。自分のペースで行動したいときには、それを認めてもらえるからです。一方で、アジア人は食文化への執着が強いように感じます。

いろいろな国の人と過ごす中で、日本人がいかに気を使いながら生活しているのかが見えてきました。良い文化であるとは思いますが、他の国の人からすると息苦しく感じるかもしれません。ある日の授業で、こんなことがありました。旅に行くならグループがいいか、一人旅がいいか。その質問にクラスの日本人全員が「一人旅がいい」と答えたのです。グループでの旅もいいですが、気を使わなくていいから「一人旅」。日本人同士は納得していましたが、クラスメイトは「何で?」という感じでした。

トレーニングについても、少し書きたいと思います。EFの生徒は、この大学の生徒と同じように施設を利用できます。私にとってはこれがシアトル校を選んだ最大の理由であり、ほぼ毎日、施設を利用しています。ウエイトルームが3つ、ランニングマシンやプール、サッカーコート4面分のグラウンドがあり、トレーニングには最高の環境です。重さの単位がポンドなのでわかりにくいことを除けば、とても使い勝手が良く、満足しています。

ウエイトルームには主にフリーウエイトが置かれています。フリーウエイトとは、ベンチプレスやスクワットに代表されるようにシャフトの動きが固定されていないもので、固定式のウエイト器具とは対照的に、複数の筋肉に同時に刺激を入れることができます。日本のジムは固定式の器具が多いので、フリーウエイトが多いことに驚きました。フリーウエイトはシャフトが自由に動くぶん危険が伴い、だから日本のフィットネス向けのジムには置いていないケースが多いのでしょう。アメリカのトレーニング文化の定着を物語っていると思います。

ウエイトルームは、一般の学生も男女問わず利用しています。日本でも筋トレ好きの人はいますが、アメリカはさらに多いと思います。ある人に聞いたところ、「アメリカでは体が大きく強そうな人がモテる」のだとか。トレーニングをする女性が多いのも特徴です。体育会に所属していない女性がトレーニングしているのは、日本ではあまり考えられません。

ランニングはグラウンドの周りを走ったり、大学周辺を動物に注意しながら走っています。大学の外周を走っていたら危うく帰れなくなるハプニングに見舞われましたが、きれいな空気の中を走るのは気持ちがいいものです。

トレーニング以外にも「オープン・バレーボール」と「オープン・サッカー」で体を動かしています。これは生徒主催のファンゲームで、集まった人で球技を楽しむというものです。バレーは大半がEvergreenの生徒で、そこに混じってプレーさせてもらうことで交友関係が広がり、会話の機会が増えました。サッカーはEFの生徒が多く、大学が夏休みになった今もEF内の多くの人が参加しています。その中心は南米人で、「チーム南米」対「その他」で試合することがよくあります。南米は南米で固まりたがるし、負けられないと熱が入り、回を重ねるごとにプレーが荒くなっているように感じます。インドアのコートはホッケーのようにフェンスに囲まれているので、ホッケー選手としてはテンションが上がります。フェンス側は絶対に負けたくないですし、何度かボディチェックをしたこともあります。

次は、現地で初めての観劇について書きます。ある日、シアトルのダウンタウンを散策中、建物の前に人が集まっていたので係員に聞いてみたら、ブロードウェイのミュージカルでした。当日券を入手し、期せずして人生初のブロードウェイミュージカル体験に。会場に入るや、雰囲気に圧倒されました。想像していた以上に大きく、トラディショナルな内装は、現実を忘れさせる空間です。会場は、ほぼ満席。暗転すると大歓声が起こり、ミュージカルがスタートします。

当然、セリフは英語で、特に歌を聞き取るのは不可能に近かったのですが、観客を笑わせる言葉が理解でき、他の観客とともに笑えた時には、2カ月間の英語力の成長を実感できてうれしかったです。演目は『Wicked』で、『オズと魔法使い』の裏話として構成されたストーリー。緑色の肌の主人公が、差別や困難を乗り越え、境遇の異なる周りの人と友情を築いていく物語です。差別や個性を題材にするあたりがさすがアメリカと感心しつつ、3時間に及ぶ大作を楽しみました。1時間半経ったところで大きな暗転があり、上演が終わったのかと思ったら休憩時間。作品の長さにも驚かされました。

鳥肌の立つような感動は、ライブ・エンターテイメントならでは。最後はスタンディングオベーションで幕が閉じ、圧巻の一言でした。チケットが高額なのにもかかわらず、2800席の会場は、ほぼ満席。スポーツビジネスにおいても参考にすべき部分が多いように感じました。ゲートを通り抜ければ非日常の世界が広がり、生演奏の音楽と照明、観客が笑ったり、反応をしやすいポイントを明確にするなど、メジャーリーグ観戦と感覚が似ています。スポーツも同じライブ・エンターテイメントなので、とても勉強になりました。

英語を聞き取るのが難しくても楽しめる空間。これは、ルールを知らなくても楽しめるスポーツ興行に通じます。アイスホッケーの大学リーグもそういった会場をつくれたらと思うのと同時に、英語をもっと勉強して、次はストーリー自体をもっと楽しめるようになりたいと感じました。

ミュージカルを見た後にスターバックスに行くと、店員が「あの作品、めっちゃ好きなんだ!」と言っていました。調べてみると本当に人気の高いロングラン興行で、チケットの入手が困難な作品の1つだったようです。そんなミュージカルを見られたのは奇跡的だったと感激すると同時に、スポーツビジネスを目指す私にとって、見るべき運命のものだったように思えました。

元のページへもどる