こんにちは。中央大学でもブルーズでも背番号28のDF、小川翔太です。神奈川県横浜市出身、高校時代は宮城・東北高校でプレーし、現在は中央大学総合政策学部の3年生です。いよいよ日本帰国へのカウントダウンです。今回の留学の目的はもちろん英語を学ぶこと、それと並行して本場のプロスポーツを体感することでしたので、現地からの最後のレポートはスポーツの話題で締めくくりたいと思います。

北米のスポーツというと4大メジャー競技(MLB=野球、NFL=アメリカンフットボール、NBA=バスケットボール、そしてもちろんNHL)ですが、先日はMLS(Major League Soccer)の試合を見てきました。MLSはサッカー文化の定着が薄いアメリカにおいて、存在価値をメキメキと上げている注目のリーグです。この日の対戦カードは、シアトル・サウンダーズ対ボルシア・ドルトムントで、サウンダーズがブンデスリーガの強豪であるドルトムントを招いたエキシビションマッチでした。やはり実力差があり、試合時間のほとんどはドルトムントがボールを支配していましたが、サウンダーズの得点もあり、面白いナイスゲームでした。

エキシビションマッチということで、おそらく普段とは雰囲気が違っていたと思いますが、とても良い経験になったと思います。試合の雰囲気は観客がつくるという印象が強く、ゴール裏だけでなく、メインスタンドの観客も90分間立って応援していました。選手紹介の時には観客が選手の名前をコールするなどの演出(ドイツ風?)も見られました。ゴール裏にはDJのような人を中心に応援が行われ、ゴール裏とメインスタンドでの掛け合いもあり、なかなか面白かったです。

始球式も独特でした。試合開始時に少年がゴールキーパーとしてピッチに立ち、試合開始のボールを彼まで戻して彼が蹴り、その後、選手交代としてチームのキーパーがポジショニングするという演出で、かなり盛り上がりました。

演出の部分でも、メジャーリーグが伝統的な印象だったのに対して、MLSはフレッシュな印象で、至るところに経営努力が見えます。たとえばコンコースにお店が並んでいるのはどちらも同じですが、MLSは固定式ではなく屋台のような店が多く、おそらく試合数が少ないのが理由だと思われます。売っている食べ物も、メジャーリーグが伝統的なナチョスやホットドッグだったのに対し、MLSではタコスなどが多く見られました。たぶんサッカーが盛んな南米出身の観戦者をターゲットにした戦略でしょう。

当日は水曜の夜だったにもかかわらず、9割くらい席が埋まっており、さすがだと思いました。スタジアムはNFLのシーホークスのホームを共有して使っているため、とても大きなスタジアムですが、上段をチームロゴのシートで覆い、違和感を与えずに座席数を減らしつつ「満席感」を醸し出しているところも、うまいなと思いました。

経営努力によってメジャーリーグとは全く異なるイメージをつくることで、観客を惹きつけているのだとひしひしと感じました。2年後にはこの街にNHLチームが誕生します。正直、まったくといっていいほどホッケーの根付いていないシアトルに、MLB、NFL、MLSというプロチームにも劣らない、地元に愛されるホッケーチームがどのようにしてつくられるのかがとても楽しみです。

シアトルで過ごす最後の週末は、マリナーズに費やしました。土日の2試合を観戦、それに加えてスタジアムツアー参加という野球漬けの2日間でした。

ビッグフライ・オオタニサンは見ることができませんでしたが、大谷選手の活躍を見ることができました。もともとは土曜日だけの観戦予定で、土曜日に参加したツアーで翌日の先発が菊池雄星投手ということがわかり、「見るしかない!」とチケットを買いました。菊池雄星VS.大谷翔平という日本人にとっては贅沢な対決をとても楽しく見ることができたのですが、菊池投手が打たれ、5回7失点で降板してしまいました。

前置きが長くなりましたが、スタジアムツアーでの経験を紹介しましょう。マリナーズは、試合が夜の日と試合のない日にスタジアムツアーを実施しており、12ドルほどで参加することができます。

最初にグラウンドに入りました。芝への立ち入りは禁止でしたが、とても綺麗な天然芝が目の前に広がります。グラウンドから見る景色は別格で、野球人ではない私でさえ、この舞台で戦いたいと思うほどでした。

次に記者会見室を見学しました。感想としては、とにかく綺麗。ツアーに参加するとここで写真が撮れるメリットがあります。すぐ横にはVIPの待合室のような部屋があり、球場とは思えない空気を漂わせていました。

その後、メディアルームとスポンサー企業向けのスイートルームを見学。スイートルームにはそれぞれ歴代の選手の名前が付けられており、部屋の中にはスポンサーの名前入りのユニフォームが飾られていました。VIPルームやスイートルームは雰囲気が他とはまったく違っていて、一般の観客の見えないところにものすごい世界があることを知りました。

ツアーガイドの話を聞いているうちに、T-Mobile Parkがあらためて素晴らしい球場だと感じました。ガイドいわく、「この球場は選手にとっても観客にとっても最高の球場」のようです。まず選手にとっての利点は、野球がアウトドアのスポーツであるから外でプレーできることは最高で、巨大な屋根を閉めても風などのグラウンドコンディションが晴れの日とほぼ同じということです。確かにグラウンドに立つと、とても心地が良かったですし、ほどよい風も吹いていました。ガイドは野球がアウトドアスポーツであることをとても強調していて、それが完璧な形で実現されているのがこのスタジアムなんだとわかりました。

観客にとっての利点は、どこの席のチケットを持っていても、球場内のどこにでも行けることです。3階の一番安い席のチケットでも、試合前にベンチ裏まで見にいくことができますし、The Penと呼ばれるブルペンを見られるエリアにも行くことができます。そして当然ながら、屋根があるので試合の延期や中止はありません。雨の街といわれるシアトルでは、とても重要なことです。

このスタジアムには、移動式のとても大きな屋根が付いています。3つに分割されていて、10分程度で球場を覆えるとか。ぱっと見には信じがたいですが…。屋根は2本のレールの上をスライドし、その幅がスペースニードルを横にして、すっぽり入ってしまうそうです。

ツアーを通じてこの球場の良さを知ったところで、ガイドの言っていた「立ち見」を実践してみました。そこには野球をつまみにして会話を楽しむ多くの人がいて、ガイドの言った「席に着いた時にはもう終わりなんだ」という言葉の意味がわかりました。この光景こそ、スポーツビジネスの目指すべきものなのだと思いました。さすがに試合がつまみとはいえ、グラウンドに背を向けるのはどうかと思いますが(笑)。

ツアー中にはイチローさんの姿も見ることができました。引退したにもかかわらず、選手の誰よりも先にグラウンドに姿を現し、ランニングとストレッチをする姿には感銘を受けました。

というわけでシアトルで過ごす最後の週末が終わりました。「終わりよければすべてよし」という言葉があるように、締めくくりが大事です。現地での経験を最後まで楽しんで、充実させたいと思います。

 

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