老若男女が肩を組み、チームの勝利を祝う。人生のベテラン組もいたが、多くは20~30歳代のようだった。


若者が集団で肩を組み、歌いながら体を左右に揺り動かす。「♬マーリーンーズーがあ~~、ほんとーーに好きだからあ~~」。昔から、プロ野球もパ・リーグも大好きで、でも、だからといって「マリーンズが(1チームだけ突出して)本当に好きだ」とは言い切れないので見学するにとどまったが、「いいなあ」と思った。自分の好きなものを、胸を張って「好き」と言いきれるのは、なんと素晴らしいことか。同志と心を通わせるのは、なんと心地よいことだろう。

日ア連の新しいオフィスに寄った帰り、そのビルのほぼ正面にある神宮球場に行ってみた。6月、スワローズとマリーンズが対戦したセ・パ交流戦。試合はマリーンズ打線が爆発して大勝したが、観戦したのが外野席だったということで、マリーンズファンの様子をつぶさに見ることができた。

ふと思い立って来てみたのだが、あらためて驚かされたのが野球観戦の人気の高さだ。一緒に観戦したスポーツライター・関谷智紀氏と、「お客さんは多いだろうけど、チケットがなくなることはないでしょ」なんて話していたのだが、試合開始からそれほど経っていないのに、あと少し到着が遅れていたら札止めという状況。外野スタンドに、並んで座る余地はなかった。

「たまには立ち見もいいですよね」なんて言いながら外野の最上段で立ち飲み観戦を敢行したが、前売り券を持っていたファンが、あとからあとからやってきて、やはり立ち飲みしながら「たーたかーえー、ちーばロッテ~」と歌っている。金曜の夜、スーツ姿の人が目立つ。チームの本拠地は千葉でも、働いているのは都内という人が多いのだろう。神宮球場特製の唐揚げは「じんカラ」で、レモンサワーは「じんレモ」。唐揚げとチューハイを味わいつつ、マリーンズの応援を目と耳で楽しむ。じんカラ、じんレモ、ジントシオ。神宮球場版「3種の神器」コンプリートだ。

以前、バレンタイン監督が就任したのを機にマリーンズファンは新しい応援スタイルを取り入れ、「Take me out the ballgame」を英語の歌詞で歌ったり、Jリーグ風の歌って跳ねる応援になったが、今や完全にマリーンズのオリジナル・スタイルが確立されている。球団がファン層のターゲットにしたのは、若者。以前、『俺たちの川崎ロッテ・オリオンズ』という本を制作した時、川崎ロッテ時代は応援団員で、現在は千葉ロッテの球団職員をされている方にインタビューしたのだが、その方がこう言っていたのを覚えている。

「マリーンズのファンの多くは、最初からマリーンズファンではないんですよ。最初は巨人とか、そういう人気チームから野球の世界に入ってきて、たとえば思春期を迎えたときにマリーンズの応援に触れて、オレはこっちだ!と思ってファンになるんです。だから多感な中高生の時期にマリーンズファンになる人が多いんですよ」。応援に感化されてファンになる人がいるから、球団も球場の雰囲気づくりには力を入れる。プロの応援プロデューサー・ジントシオさんにも話を聞かせていただいたが、ジンさんは今、楽天球団に招かれ、千葉から仙台に移って新しい応援をつくり出している。楽天もまた、応援によって新しいファンを開拓しようと考えているのだろう。

4月、仙台出張の際には楽天の試合を見る機会を得た。球場におけるカスタマーサービスでいえば、おそらく日本一(当社比)。外野席には緩衝地帯も柵もなく、2チームのファンが並んでそれぞれのチームを応援していた。昔の外野席のような切羽詰まった雰囲気は、今はもう存在しない。


試合中、マリーンズファンは飛び跳ねる。歌いながら、拳を上げながら。それを見た関谷さんは「若いファンが多いのもわかりますよね。この応援、若い人じゃないと3時間もたないもん」と言った。飛び跳ねる群衆の中に、ちょっと前まで若かった人、だいぶ前に若かった人も、いるにはいるが少数派だった。

翻って、アイスホッケーのスタンドには何歳くらいの人が多いのだろう。最近でいえば、40歳代~50歳代が主流か。大人のファンが多いのはけっして悪いことじゃないし、私だってその1人だ。ただ、どのジャンルにもいえることだが、若者や子どもが関心を示さないものに未来はないし、逆にいうと、若い人や子どもが入ってきやすい空気を常につくっていかないと、そのツケが必ず将来に回ってくる。

今から20年前、いや30年前か。週末の品川、その後の東伏見や新横浜は、若い女性のグループや、デートを楽しむ2人連れが多かった。アイスホッケー観戦は、都会におけるスタイリッシュな娯楽だった。

昨年、ブルーズ創設に伴って東伏見のリンク近くに引っ越す際、昔のビデオがたくさん出てきてつい見入ってしまったのだが、今、冷静に見てみると、「日本アイスホッケーリーグ」のプレーのなんとおおらかなことか。特にコーナーでのプレッシャーの少なさは顕著で、今、当時ほどの時間をかけて攻め出しをしていたら、たやすくフォアチェッカーの餌食になるだろう。

プレー自体は当時よりも進化しているのに、人の目が注がれない。情報が足りない、届いていないということもあるのだろうが、それ以前に、アイスホッケーの会場が、若い人が行きたくなる空間になりきれていないということを私を含めて反省すべきだろう。

「若い人がなぜ来てくれないのか」という敗因を挙げるよりも、「これがあれば来てくれる(かも)」という能動的なアイデアを、予算を勘案しつつも、このオフの間にしっかり突き詰めていきたい。最初はほかのスポーツが好きだったのに、あるときを境に「オレはこっちだ!」「私はアイスホッケーなんだ」と改宗してくれる若者が、1人でも多く首都圏に現れるように。

(アイススポーツジャパン代表 山口真一)

7月にはスワローズ側の応援席でも観戦してみたが、1人で、あるいは友人と、ファンはそれぞれ思い思いのスタイルで観戦を楽しんでいた。三塁側スタンド後方、右側のビルに日ア連の新しいオフィスがある。

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