9月7日、東京都西東京市のダイドードリンコアイスアリーナで、日本の学生アイスホッケーをリードする関東大学リーグ戦のトップカテゴリー、ディビジョンⅠ・A(1部リーグA)が開幕。前年の大学タイトル3冠の明治を筆頭に、今春優勝の東洋、昨秋2位の早稲田、昨秋4位の中央が上位校の貫録を見せて1勝目を挙げた。

上位4校の中で唯一、チームの顔であるゴーリーが春と替わったのが中央だ。開幕試合の先発を務めたのは、4年生の合田聖(ごうだ・ひじり)。立ち上がり、法政に何度か決定的チャンスをつくられながらも得点を許さず、6-0で60分を終えた。我慢比べだった1ピリから一転、中央は2ピリに5得点。春、ベスト4決めの試合で敗れ、上位リーグ入りを阻まれた相手に、前週のサマーカップ決勝(苫小牧)に続いて借りを返したことになる。

中央のゴーリーは春まで、合田の1学年下の館田卓(3年)がメイン。1学年上には、昨シーズンまで不動のGKだった金子将太朗(現・苫小牧市役所)がいたために、合田は中央に入ってからずっと控えで、館田の入学後はベンチからも外れてブレザー姿で試合会場に来ることも少なくなかった。大学アイスホッケー全体を見回してみても、4年の春まで控えだったGKが秋にメインになることは珍しい。

「春の大会で法政に負けて、チーム的にまずいぞってこともありましたし、個人的にも、その試合に出られずに負けてしまったのが悔しかったんです。だから春以降、もう一度鍛え直して、夏の大会からは自分が試合に出てチームを優勝させたいと思いました。もう一度、イチから頑張っていこうと自分の中で誓ったんです」と合田は言う。

アイスホッケーは、スケーター(DF、FW)は60分間の中で入れ替わりで試合に出る一方で、GKは氷上では常に1人だ。勝ち続けているチーム、特に大学や高校は、基本的にメインゴーリーを代えない。釧路江南高で1年からマスクをかぶってきた合田にとって、大学でのこれまでの3年半は、ひたすら耐え忍ぶ日々だった。

「試合に出られないからといってクサるのは簡単なんです。これまでは、絶対的守護神といわれた将太朗さんがいて、僕の目標は、将太朗さんが在学している間に追い抜くことでした。でも、僕の実力不足でそれは達成できなかった。大学でホッケーやるのも今年が最後だし、このまま試合に出ないでベンチを温めるのは自分の中でも面白くない。ラストシーズン、自分の力で優勝させたいと思いました」

これまで、サマーカップなどの試合で完封勝ちしたことはあったが、公式戦での完封は、この法政戦が初めて。チームメイトから「ゴッツ」と呼ばれ、やさしい性格で後輩からもイジられることが多い合田だけに、終了のブザーが鳴ると全員で完封勝ちを喜んだ。「1ピリから、ウチの攻め自体はよかったんですけど、点数が入らなかった。僕はとにかく我慢して、味方が点を取ってくれるのを待とうという気持ちで守っていました。1ピリに先制されていたら、おそらく2ピリは法政のペースになっていたでしょう。チームメイトから、このまま完封しろと言われていたし、ゼロで終わればチームの雰囲気もよくなると思って、自分でも無失点は意識していました」

大学卒業後は、航空会社で働く。だから本格的な競技生活は、このリーグ戦とインカレが最後になる。「僕は4年目の途中から試合に出られるようになりました。気持ちをクサらせず、自分が何をしなければいけないのかを考えて地道に頑張っていけば、いつかは実を結ぶ。そういう気持ちを後輩たちに残していければと思っています」

4年目の秋に開花したゴーリー。傍から見れば、そういうことになる。しかし、合田聖という花は、これまでもずっと咲いていた。店先に並べられることはなかったけれど、いつでも選んでもらえるように、人目につかない店の奥で、水をやり、気持ちをあたためていたのだ。可憐でも派手でもない、ゴツい花。阿部翼という泥くさいキャプテンが引っ張る今季の中央大学に、その花はとても似合っている。

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