第88回全日本選手権A・準決勝(12月12日・テクノルアイスパーク八戸)

アイスバックス 1(0-0、0-0、1-1、延長0-1)2 クレインズ

試合中盤までは凡庸だった。失敗の許されない一発勝負。両チームとも大事に行こうとしているわりには攻め出しとフィニッシュの精度を欠き、第1ピリオドは0-0。2ピリはさらにデリケートな展開で、双方無得点のまま最終ピリオドを迎える。

3ピリ開始前、会場ではちょっとした出来事が。三陸沖を震源とする震度5弱の揺れによって、館内中の携帯電話の緊急ブザーが鳴り響く。ボード際の氷も、少しではあるが破損し、整備のための間をはさんでようやく3ピリがスタートする。

地震のせいではないだろうが、そこから試合が動き始める。3ピリ開始15秒、クレインズはFW齊藤大知のゴールで先制。57分にバックスはDF秋本デニスが豪快にたたき込み、勝負は5分間の延長戦へ。62分、クレインズはFWサンディス・ゾルマニスがOゾーン右から切れ込んで決勝のスコア。神経戦に終止符を打った。

決勝ゴールは、クレインズDF蓑島圭悟のクレバーな判断から生まれた。5分間の延長は3人対3人。蓑島はDゾーン奥からパックキャリーし、前線の2人のうち右レーンを走っているゾルマニスへのパスを決断。ゾルマニスに相手選手が詰め寄ってきているのを見てあえて背後のボードを狙い、レシーブすると同時に相手をかわす形になるパスを選択した(この大会は選手への対面取材が禁じられているのでLINEを通じて確認)。咄嗟の場面で、蓑島らしい、IQの高いプレーが出た。

試合後の会見でクレインズのキャプテン、FW池田一騎は「シーズン中からこういう接戦が多くて、でも今日は勝ち切る強さを見せることができたと思います。同点(1-1)に追いつかれたゴールは、メンタル的に(負担が)来る時間帯(残り約2分)でしたが、ベンチ内にネガティブな声はなかったですし、オーバープレーもなかった。(チームの後援会が全日本選手権出場に際して216万円以上の寄付を集めたことに対して)期待と信頼を感じていますし、それに対する責任もある。決勝は、プライドを持って戦っていきます」

会見の席上、池田は「悪い意味でもチームがメディアを騒がせてしまった」と言ったが、だからこそ、この全日本選手権で勝つことで流れを変えたい思いが、クレインズの選手はことのほか強い。日本製紙時代は、大学・高校のトップ中のトップが集まるチームとして君臨していたクレインズ。蓑島の高度なプレー、そして池田キャプテンの言葉からは「クレインズ」というチームが長きにわたって培ってきた時間の重みとプライドが透けて見えるようだった。(取材・山口真一)

 

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