第88回全日本選手権A・決勝(12月13日・テクノルアイスパーク八戸)

フリーブレイズ 1(0-0、1-2、0-1)3 クレインズ

「努力する、リアリストの集団」。優勝したクレインズを言葉にするなら、そんな表現がふさわしい。

セミファイナル以降の2試合で目についたのは、汗をかくことをいとわないクレインズの献身的なFWの姿だった。「システムは2-1-2。攻撃の約束事は、相手のゾーン(クレインズにとってのOゾーン)の奥でプレーする時間を長くしようということでした」と、キャプテンのFW池田一騎。FW出身の齊藤毅コーチいわく、「攻撃では2つのプレーを徹底させた」という。

まず1つは、パックキャリアが駆け上がった時は、必ず並行して別の選手がパスコースへと走り込むこと。もう1つは、Oゾーンでパックをキープしている時は、ゴール前に必ず人を立たせることだ。パックキャリア以上のスピードで前線に上がっていくのは、体力と根性が必要だ。つぶされても、踏まれても、相手ゴールの前に立ち続けることも、やっぱり勇気と根性が要る。疲れていようと、相手に何をされようと、クレインズのFWは勝つために「汚れ役」を全うした。

すると、何が起きるか。攻撃に、厚みが出てくる。一発目のシュートが外れても、その次、またその次と連鎖が生まれ、それが相手のスタミナを奪っていく。やがて「得点」という、目に見える形になって表れる。

双方とも無得点で迎えた第2ピリオド、クレインズが「ミッション」通りのプレーで先制する。21分、FW小原大輔のラップアラウンドから、ゴール前に詰めていたFW入倉大雅へとつないで1点目。23分には、FW齊藤大知が中央突破し、ゴール前で落としたパックをミドルドライブのFW河合卓真がたたいて2点目を挙げる。個人の力ではなく、複数選手の力によるゴール。フリーブレイズGK畑享和は、「2ピリ最初の5分で勝負が決まってしまった」と舌打ちしたが、一発、さらにもう一発と、相手のメンタルをいたぶるクレインズの集中攻撃だった。

フリーブレイズは30分、キャプテンのFW人里茂樹のゴールで1点差に詰め寄るも、クレインズは47分、ゴール前に出た跳ね返りを入倉が右から押し込んで3点目。これでほぼ優勝が決定的になる。さらには、GKヤニス・オージンシュの安定感。もし大会MVPが「攻撃部門」と「守備部門」に分かれていたら、後者は間違いなく彼のものだったろう。

日本製紙時代は7回の優勝を刻んだ全日本選手権も、「ひがし北海道クレインズ」となってからは初めて。日本製紙の廃部発表はちょうど2年前の全日本選手権後だが、この2年間で、選手の陣容も、組織も、本当に大きく変わった。

MVPを受賞した入倉は、日本製紙の社員としてトップリーグでのキャリアをスタートさせ、今季からプロ契約。「結果を出さなければクビを切られる。もっともっとやんなきゃという気持ちでプレーしています。そこが実業団時代との一番の違い」と話す。

「優勝キャプテン」となった池田は、泥くさいプレーを60分続けることができた理由に、シーズン前の陸トレを挙げた。フリーブレイズの監督や選手が「体力、集中力という部分でクレインズとの差を感じた」と口をそろえたのに対し、池田は「それほど差があるとは思いませんが…」と前置きした上で、「夏場の厳しいトレーニングをみんなで乗り越えてきた。その成果が出たということは、言えると思います」と胸を張った。

2年前の廃部決定から、署名や寄付、必死の営業活動を経て、今日まで活動を続けてきたクレインズ。拍手喝采に包まれて存続を果たしたわりには、今なお苦難の連続で、時に非難の声を浴びたりと、山よりも谷間の時間のほうが長かった。

昨シーズンからチーム運営にあたる田中茂樹代表は、「全国のクレインズファンの方は、この優勝を喜んでくれたと思います。これからも、日本のアイスホッケーを釧路から盛り上げていければ」と、しばし喜びに浸った。

チームを取り巻く状況は、これから先も楽ではないはずだ。しかし、優勝を決めた選手とスタッフ、裏方、そしてファン・サポーターは、ひととき喜びの中に身を置いた。それは苦しい時間を共有してきたからこその光景だった。

世の中が、見えない敵と戦った2020年。そんなシーズンだからこそ、困難を乗り越えた末のクレインズ優勝は、一層の輝きを伴って歴史に刻まれる。(取材・山口真一)

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