第70回全国高校総合体育大会・アイスホッケー競技 準々決勝(1月23日、長野県岡谷市・やまびこスケートの森アイスアリーナ)

八戸工 0(0-4、0-5、0-8)17 埼玉栄


埼玉栄のベンチ裏は「SAMURAI BEAVERS」。チームのペットマークが描かれた応援旗が、誇らしげに掲げられてある。一方の八戸工のベンチ裏には「体罰根絶! しない、させない、許さない」。ずいぶん変わったスローガンだと思ったが、違った。よく見ると「体罰」はインターハイ事務局のもので、八戸工の応援旗はそこに貼られていなかった。つまり、応援旗自体がなかった。それは両チームの現段階における格差を示しているようにも感じられた。

そんな両チームが、全国の準々決勝でぶつかった。過去に単独チームとして国体を2度制している埼玉栄は、この大会でインターハイ初優勝を狙う。かたや八戸工は、今回が初めてのベスト8。とはいえ大会には2回戦からの登場で、クジ運に恵まれた部分も、あるにはあった。

八戸工の白鳥洋監督は、早稲田、アイスバックス、フリーブレイズでゴーリーだった経験を持つ。格上の埼玉栄を相手に「まずは堅い守りから」を前提にしつつ、選手には「点数を取ることを目指そう」と呼び掛けた。「相手との力の差はありますし、失点しないように守ろうというのは当然あるんですが、守りに入ってしまったら、試合をやっていてもつまらない。積極的にゴールを狙っていけと言いました」

八戸工のベンチ入りは13人で、GKを除けば8人回し。高校からホッケーを始めた選手が4人、小学校ではプレーしていたが中学時代は休んでいた選手も1人いる。結果としてこの試合、目標だったゴールは実現しなかった。しかし、60分を通じて「気持ちが切れた」と感じさせる時間帯はなかった。

 

3年生のFW藤巻達光キャプテンは、「こういう強いチームと初めて試合ができて、最後まで楽しかったです。基本的な技術のレベルの差は感じましたが、自分たちも走れば通用するっていう手ごたえもありました。ずっとチームの目標だった初戦突破は実現したので、後輩たちには、いつか優勝できるように頑張ってほしい」。大学進学後、ホッケーを続けるかはわからない。もしかしたら、これが最後の「競技ホッケー」。疲れ、悔しさよりも、表情には充足感が漂っていた。

 

一方の埼玉栄は、フォアチェックが素晴らしかった。埼玉栄のOゾーン、すなわち八戸工がDゾーンから攻め出しをしようとしても、前線に張った埼玉栄のFW1番手と2番手がパックキャリアを自由にさせない。パックに粘り強く絡み、それでいて追いすぎることなく、スムーズに他の選手に受け渡す。意欲、運動量に加えて、規律が備わったアグレッシブフォアチェック。それはそのまま攻撃の起点となり、17得点の源になった。

さらに素晴らしかったのは、その規律正しさが最後まで乱れなかったことだ。大量リード、しかも試合後には軽井沢に向けてのバス移動も待っている。エネルギーをセーブしたくなるのが人情だが、最後まで相手への敬意と緊張感が絶えることはなかった。

点差だけをとれば「17-0」。それでも最後まで、両チームの選手は見る者を飽きさせなかった。スコアシートを見るだけでは、わからないもの。それがインターハイであり、アイスホッケーであり、スポーツなのだと教えられた試合だった。

(取材・山口真一)

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