写真は左からFW矢島、FW徳光、FW宮本(イ・ジュヨン似)。徳光と宮本はこの3月で卒業、新シーズンは矢島キャプテンのもとで再スタートを切る。


中央大学の7戦全勝(不戦勝含む)、4年ぶり4回目の優勝で幕を閉じた、今季の関東大学リーグ戦。インカレが中止となり、関西学生リーグも交流試合扱いとなった今季、学生トップカテゴリー唯一のビッグタイトルだ。新年度に切り替わる前に、中央の主力セットを担ったFW徳光陸キャプテン(4年)、副キャプテンのFW宮本明朗(あきら・4年)、FW矢島翔吾(3年)の3選手によるトークの後編をお届けする。今回はリーグ優勝を決めた明治戦と、今季のチームについて(取材・構成/山口真一、写真/森健城)。


目を閉じれば「優勝」が思い浮かんで、眠れなかった(矢島)

12月6日の最終週を前に6戦全勝は中央1校で、東洋は6勝1敗(最終週の早稲田戦は不戦勝)、明治は5勝1敗となりました。中央の優位は動かないものの、3校いずれにも優勝の可能性があるという短期決戦。リーグ最終カードは明治-中央で、中央は昨シーズン、優勝をつかみかけながらも最後に明治に持っていかれています。

徳光 とにかく「明治に勝ちてえなあ」ということしかなかったですね。1点、2点差なら「負けても優勝」というのはみんなわかっていたと思うんですけど、それを口にしたら気持ちが崩れていくというか。

それこそ1年前(2019年秋)のリーグ戦では、最終週を迎えて勝ち点トップの中央が東洋にPS戦で敗れて、直後に行われた試合で明治が早稲田に勝って決勝リーグ2連敗からの逆転優勝を果たしています。

徳光 そうです。だからこそ今回は、全部勝って優勝したい気持ちがありました。「負けて優勝してもうれしくねえよな」みたいな感じで、「負けても優勝できる」ではなかった。明治戦までの1週間で「勝たないといけない」「勝って優勝したい」という方向にチーム全体が向かっていけたと思います。

宮本 東洋戦が終わって「あと1試合」ということになって、自分もですけど、周りもみんな「勝って優勝しよう」という気持ちになっていましたね。本当にみんなの気持ちが1つになったから、明治戦でベストゲーム(5-4で勝利)ができたんじゃないかと思います。

矢島 東洋に勝って優勝が目の前ということになって、ぶっちゃけ2日くらい眠れなくなってしまったんです。自分の中で優勝をものすごく意識してしまって、しかも4年生との最後の試合ということもあって高ぶりすぎて、目を閉じると優勝が頭の中に浮かんできて…。だから練習では意識して「チームのために頑張ろう」と思うようにしました。そうしたら自然と、明治戦に向けてコンディションがよくなっていきました。

明治との試合を前に、徳光キャプテンは「笑顔でプレーしよう」とみんなに言ったそうですが、1ピリは0-0。2ピリに入って27分、FW荒木翔伍選手(2年)のゴールで中央が先制します。得失点差のアドバンテージがある上での先制ゴール。精神的な部分で大きな効果があったのでは。

徳光 明治戦の60分間は夢のような時間でしたね。今だから言いますけど、ふわふわしていた部分はありました(笑)。荒木の1点目もそうですし、直後の翔吾の2点目もそうですが、60分間を通して一度もリードされずに試合を運べたので、そこは助かった部分です。負けても優勝の可能性があるといっても、リードされたら「取り返さなきゃ」という気持ちが強くなると思うんです。追いつかれても同点という状況であれば、「まだイーブンだから」とプラスの気持ちでいることができる。ベンチでもみんな声が出ていたので、すべてがうまい具合にいってくれたと思います。

徳光キャプテンの話にもありましたが、矢島選手の2点目にも大きな意味がありました。1-0が1-1になるのか2-0になるのかでは全然違います。

矢島 決めたのは僕ですけど、そこまでつないでくれたのは明朗くんと陸さんだったので、この2人がいなければ得点のチャンスはなかったと思います。僕のシュートは勘で、適当に打っていたのでラッキーでした(笑)。

27分に立て続けに2得点して2-0とした後、32分に1失点、38分には2失点目を喫し、2-2で2ピリを終えました。2失点目のシフトはこの3人でしたね。

徳光 残り2分くらいで僕らのシフトで、もう各セット1回くらいしか(シフトが)ないから「最後しっかり守ってリードして終わろうぜ」と言っていたんですが、自分たちが出ていって失点してしまって、「やらかしたあ~」という感じで(笑)。でも、そのあとピリオド間にみんなで「まだ同点っしょ」という感じで、一度リセットできたんですよ。

3ピリ最初のシフトで矢島選手が、42分にはFW権平優斗選手(2年)がスコア。得失点差を勘案すれば、この2得点でかなり優勝が近づきました。

宮本 いやあ…。自分はまだ「気を引き締めないと」と思いながらプレーしていましたよ。

矢島 (57分に)ウチが点数入れて5-3になって、残り30秒くらいで明治が1点返したじゃないですか。そこからウチは4年生のスペシャルセットが出たんですけど、僕は同点でも優勝ということを忘れていて、「ここで行っちゃうの? 大丈夫なの?」って、もう焦っちゃって(笑)。

徳光 宮本 ははははは。

矢島 もし失点しても(同点なら)優勝だってことを本当に忘れていて。そのくらい試合に入っていましたね。


 

 1人ひとりの「勝ちたい」気持ちが、試合ごとに大きくなった(宮本)

矢島選手の心配も杞憂に終わり、5-4で中央が逃げ切りました。これまで3人とも優勝というものに縁がなかったぶん感慨も大きかったのでは。

徳光 僕の場合、第一志望の受験に失敗して中央に拾ってもらったんですけど、そのころの中央は勝つのが当たり前という感じで先輩方もやっておられて、「中央に入るからには絶対に日本一を達成したい」という気持ちで入ってきたんです。それなのに、3年間は優勝できずに終わってしまった。特に僕らが2年生の時から本当に勝てなくなってしまって、自分のせいで負けた試合も何試合もあって本当に申し訳ない気持ちでしたし、僕らの学年は戦力的に揃っていない代なので、すごく迷惑をかけているなあという思いがありました。

宮本 中学・高校時代は日光で「目標は日本一」とは言いながら、心のどこかで「ちょっと厳しいかもな」と思っていたんです。そこから中央大学に声を掛けてもらって、「中央に入れば何回かは日本一になれるべ」という気持ちが、正直いうとあったんですよね。でも、これまでずっと優勝できなくて、「自分は持ってないのかな」と思う時もあったんですけど、最後の年、最後の大会で優勝できて、今まで頑張ってきてよかったなと思いました。

矢島 前回の秋リーグであと一歩のところで負けて、それが教訓になったというか。高校(駒大苫小牧高)時代、僕の1コ上の時にはインターハイで優勝しているんです(2017年1月、日光大会)。だから、「ここまできたら、そろそろ(優勝も)あんじゃねえか?」みたいな感じでした。高校時代は僕が最終学年の時には優勝できなくて、だから今からそれが心配…心配じゃないですけど(笑)、さらに挑戦していかないとダメだと思っています。

このリーグは不戦勝が1つあったので実際に試合したのは6回ですが、開幕カードの慶應戦はスコアリングに苦しんで3-2。そこから1カ月半間で、チームをいい方向に変えることができた理由は。

徳光 ベンチの雰囲気が試合ごとによくなったと思います。4つ目の選手がベンチで声を出して盛り上げてくれて、それを試合のたびにスタッフがみんなの前で名前を出して褒めてくれたんです。それがすごくよかったと思いますね。その選手がチームに貢献できたことで自信を持って、試合で活躍するケースもありましたし、そうやって毎試合、毎試合、「この選手が盛り上げてくれた」といって名前を挙げてくれたことが、チームの底上げにつながったと思います。あとは、試合を重ねるごとに選手が冷静になってくれたというか、前半戦は個人の感情が出て反則することもけっこうあったんですが、反則した選手もだんだん自覚してくれて、それがチームのまとまりにつながっていったと思います。

宮本 1人ひとりの「勝ちたい」気持ちが試合ごとに大きくなったといいますか、ベンチの雰囲気も試合のたびによくなっていきました。特に4年生でいうと、あまり試合に出ていない人がスティックを運んでくれたり、4セット目の人がベンチの中で声を出して盛り上げてくれたり、チームのために積極的に動いてくれたのが後輩に伝わったのかなと思います。

矢島 僕は、リーグ戦の前半は「自分のポイントを稼ぎたい」とか「自分はこういうことをしたいのにできない」という我(が)があったんです。東洋戦の前に日体と練習試合をしたんですけど、引き分けで終わってしまって、僕の中で「どうしちゃったの?」って感じだったんです。「これじゃあ絶対勝てねえな」って。で、その次の練習から「チームのため、チームが勝つために自分ができる限りのことをしよう」と思って、そこから勝利のためのプレーが自分の中に確立されて、それが結果に出た感じです。自分が何をしなければいけないか、そこに気づくことができたのが、一番の成長だと思います。

1025日、2カード目の大東戦で、FW石毛力選手(4年)がハットトリックを達成しました。4つ目とかベンチ外が多かった選手が活躍するとチームの空気が変わることって、けっこうありますよね。昔の話をすると、2017年の八戸インカレで中央は東洋に準決勝で敗れましたが、前評判はむしろ中央のほうが高くて、でも東洋は関学との1回戦で、ずっと控えだったFWの二塚亮太君(当時4年)がゴールを決めて、そこからチームの空気が一気に変わってしまったんです。それと同じように、あの石毛選手のゴールがチームを化けさせるトリガーになった気がします。

徳光 昨シーズンまでの3年間、チームを見てきて、4年生の雰囲気が下級生に与えるものってすごく大きいんだと思いました。実際はそこがなかなかうまくいかなくて、チームが勝てないのも見てきました。とにかく自分たちが4年生になったら、チームの和を乱さないようにしようというのは心掛けていましたし、シーズンが始まる時に、4年生の一人ひとりに役割を分担したんです。出発などの時間を管理する人とか、掃除を管理する人というように、4年生全員に役割を受け持ってもらったんです。それが主体性につながったというか、「自分は4年生なんだ」という自覚と責任感につながったと思います。

リーグ期間中も、4年生の小川翔太選手(DF)が中心になって外出を厳しく制限していたと聞きました。というか、本人が言っていました。

徳光 プレーとは直接関係ない部分ですが、そういう積み重ねが「チームのために動く」ことにつながったと思いますし、そこは本当に感謝しています。

宮本 自分は特に4年生として「チームを引っ張った」ということはないんですけど、ホッケーを一生懸命やっている姿、まじめにやっている姿を見せることが自分の役割だと思っていました。フリーアイスの時に、1年生に「ここはこうしたほうがいいよ」というような、本当にちょっとしたことなんですけど。今年の4年生は半数が試合に出ていなかった人たちですが、出られないからといってやる気をなくすんじゃなくて、雑用をやってくれたり、そういう姿を試合に出ている後輩たちが見て、「先輩のために勝ちたい」と思ってくれた気がします。


 

「最後に勝って、笑って終われるっていいなあ」と思いました(徳光)

優勝を決めた相手は明治でしたが、明治戦といえば2年前(2018年秋)の「1-7」を思い出します。選手の顔ぶれはそろっているのにチームが1つになれず、試合後に涙を流す選手もいました。2年前の明治戦で、涙ばかりか血まで流した徳光、宮本選手が、よくここまでチームを立て直したという気がします。優勝が置き土産になる2人は、卒業にあたって後輩に何を伝えたいですか。

徳光 スポーツは結果の世界ですし、学校でも単位を取らないと卒業できませんよね。これからも、結果を追い求めた上で「チーム」をつくり上げていってもらえればと思います。新シーズンも間違いなくいいチームができ上がると思いますし、戦力もそろっているので、すごく楽しみにしています。

宮本 チーム力という部分で、今年の4年生は例年に比べて試合に出ている人が少なかったですし、スター選手もいないので、「チーム」として戦わないと勝てなかったんですよ。それで最後はチームが1つになって、チーム力で優勝できた。新シーズンはスキルのある選手がたくさん残るので、でも、そこで個人個人になるんじゃなくて、さらにチーム力をつけていってもらえば、このチームよりもっと簡単に優勝に近づけるんじゃないかと思います。とにかく僕らは4年生同士でミーティングを何度もやったし、それでチーム力が上がったと思うので、そういう部分を継続してもらえればいいかなと。

徳光 今までと比べて選手がそろっていないことも、東洋や明治が優勝候補と言われていることも、僕たち自身わかってたんです。でも、その中で勝てた要因の1つに、やっぱり「チーム力」があると思うんです。じゃあチーム力ってなんだといわれたら、なかなか答えは出てこないですけど、たとえば大会が終わった時に「今年はまとまっていたよね」というチームがつくれていれば、結果もついてきているんじゃないかなと。これをやればチーム力が高まるという確立されたやり方はありませんが、人と人とのコミュニケーション、そうしたもの1つ1つの積み重ねだと思うので、ホッケーだけじゃなくて、私生活とかそれ以外の活動でも、みんなで協力してやっていくことを積み重ねてほしいなあと思います。

矢島 どういうチームにしていきたいのか、今季のチームを見ながら、あるいは1・2年生の時に感じていたことを新4年生同士でしっかり話し合っていきたいですね。優勝したことで追われる立場になりますし、全チームが中央に勝つための対策をしてくるでしょうし、その中で僕たちがチーム力で戦うには、やっぱりチャレンジャーというか、常に挑戦する気持ちでいかないといけないと思います。優勝しても、シーズンが変われば「去年の話」なので、新4年生でじっくり話し合って、新3年生以下も「何のためにやるのか」というのをしっかり自覚してもらえれば。

矢島選手にとっては、前年に優勝したチームをキャプテンとして引っ張るのは駒澤で経験していますものね。

矢島 高校生と違って、大学生の場合はホッケーだけじゃないですし、それも踏まえていろんなことに挑戦してもらいながら、その中で優勝という目標に向かっていけたらと思っています。

明治戦の後の1時間、アリーナ前の広場でチーム最後のミーティングがありました。コロナの影響で「星空ミーティング」になりましたが、4年生のスピーチと下級生の反応を見て、優勝するにふさわしいチームだと感じました。個人的な話をすると、このリーグは取材パスの申請がうまくいかなくて、いつもリンクの外で選手を待っていたんです。無観客だからこそやろうと考えていた企画もできずに本当に申し訳なかったのですが、あのミーティングに立ち会えたことで、外で立っていた日々もムダではなかったと思えました。ミーティングの最後、八戸了監督が「これをもって本年度のチームの活動をすべて終了します」と締めた瞬間の空気は、とても美しかったです。

徳光 あの瞬間、勝って終わることの重要性をすごく感じました。最後のミーティングは、例年であればインカレの3決終わりとかにやるんですが、みんなで涙を流しながら「勝たせてあげられなくて申し訳ない」「来年以降、この無念を晴らしてほしい」みたいに、笑顔が出ることなんて1つもなくて、毎年ただ泣くだけで終わっていたんです。今年もそんな感じで終わるのかなあと思っていたんですけど、涙もそれなりにありましたが、それ以上に笑顔があった。みんなの顔を見ながら、「最後に勝って、笑って終われるっていいなあ」と思いました。

あのミーティングの空気は、もしかすると中央にしか出せないものだったかもしれません。2020年は、どう考えたってコロナの年です。コロナで苦労して、しかしコロナを言い訳にしなかったチームが頂点に立った。「7月を乗り越えたのがすべて」という八戸監督の言葉が、あのミーティングを見て実感できました。

徳光 いつも4年生同士で「チームに何が残せるのかな」と話し合ってきたんですよ。就職活動もそうですし、(小川)翔太がアメリカ留学に行ったり、僕たちの代で、これまでなかった新しい道を広げることができた。アイスホッケー選手である前に、1人の人間として、1人の大学生として、中央大学のアイスホッケー選手として認められるようにならなくちゃという気持ちが強かったんです。それを続けてきた中で、思い違いかもしれないですけど、東洋、明治と優勝争いをしている中で「中央大学に勝ってほしい」と思ってくれている人がもしかしたら多いのかな、なんて思ったり…(笑)。実際はそんなことはなかったかもしれないですけど、それまで積み重ねてきたことによって、そんなふうにプラスに考えられることにつながったんじゃないかなと僕は思っているんです。

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