第89回全日本選手権Aグループ・3位決定戦(12月19日・長野ビッグハット)

HC栃木日光アイスバックス 4(1-1、2-1、0-1、延長1-0)3 レッドイーグルス北海道

予想していた人は、多くはなかったはずだ。今季のジャパンカップ、前・後期を通じて17勝1敗のイーグルスと、前期2位のバックス。カップ戦の上位2チームが、ともに3位決定戦に回るとは。

前日、準決勝のカードは、3年連続で同じ組み合わせ。とりわけイーグルスと東北フリーブレイズは、勝敗まで3年続けてまったく同じ、ブレイズの勝利だった。今季、リーグ戦(ジャパンカップ)はここまでイーグルスの4連勝。しかし、トーナメントではことごとくブレイズが勝つ。いったい理由は何なのだろう。イーグルスの選手、あるいはファンの中には、昨晩じっと考えた人もいただろう。

会見の席でイーグルス菅原宣宏監督は言った。「3点ビハインドで3ピリを迎えたのは…私が監督になって100試合くらいやってきましたが、2回くらいしかない。なぜこうなってしまったのか、まだ(試合直後の時点では)よくわかんないです」「5点入れられたら、勝てない。3年連続同じカードで同じ結果。監督の力がない、そこに尽きると思います」

キャプテンのDF橋本僚も、どう受け止めればいいのかわからない様子だった。「いつも通りやって、この結果。2年連続で決勝に行けていないことは、意識しないことはなかったですが…。何が理由なのか。心なのか、いったい何なのか」

一方で、ブレイズの大久保智仁監督はシンプルな思考だった。「イーグルスさんはチャンピオンチーム。選手層も、ポテンシャルも、相当のものがある。ウチは挑戦者として、勝つことだけを考えました」。3点リードで迎えた3ピリの前は「選手には、引かずにやろうと言いました。勝っている(リードを奪っている)というのではなく、0-0の気持ちで戦おうと」

大久保監督が言うように、チームとしての力はイーグルスが上。そう見るのが妥当だろう。しかし、この1試合にかける気持ちは、おそらくブレイズのほうが上だった。目の前の「この試合」「この60分」。そこにかける気持ちで、ブレイズがイーグルスを上回っていた。

インターハイで、よくこんなケースがある。インターハイは、たいてい準々決勝と準決勝が同じ日に行われるが、優勝を狙うチームが準々決勝で、そこそこ強いが優勝を狙うほどではないチームに苦戦するのだ。スタッフも選手も「準決勝で〇〇と当たる」というのがどうしても頭の中にあって、目の前の試合に100%の気持ちで臨めない。逆に、対戦相手は「負けてもともと」「どうせなら思い切りやってやれ」という気持ちで、1ピリからフルスロットルで来る。格上のチームとすれば「あれ? あれ?」という感じで試合が進んでいき、気がついたら…ということが起きるのだ。

18日、イーグルスとブレイズの準決勝、先制したのはイーグルスだった。12分に、エース中島彰吾がPPゴール。しかし、そこからブレイズがベテラン佐藤翔、ルーキー生江太樹の連続ゴールで逆転、2-1で1ピリを終える。2ピリも30分、39分に連続ゴール。過去の戦績や選手層は、まるで意味をなしていなかった。目の前の試合を、いかに必死に取りにいくか。問われていたのは、その一点だった。


3位決定戦は、アイスバックスが常に先手をとった。2ピリを終えて3-2、バックスのリード。イーグルスは3ピリに追いついたが、延長で敗れた。

試合後の菅原監督は開口一番、「残念です」と言ったきり、しばらく言葉が続かなかった。「勝ったチームが強いということです。今はチームの歯車がかみ合っていないというか…。(次に向けて)何から始めればいいのか、いま考えているところです」。キャプテンの橋本は「いつも通りにやろうと思いましたが、うまくいかない」と首をひねった。「全日本選手権は一発勝負、いつもとは全然違う戦いなんだなと感じました」。3点目、同点ゴールを決めたFW大澤勇斗はこう言った。「トーナメントは、どのチームにも勝つチャンスがある。それをわかっているつもりでしたが…。プロとしてもっと意識を高く、強く持たないといけないのかなと今は思っています」

 

3位決定戦、アイスバックスは延長を含めた4得点すべてにFW寺尾勇利が絡んでいた。延長戦の「Vゴール」も寺尾だった。「この雪の中、栃木や全国のあちこちからファンの人が見に来てくれた。それが一番です。ゴールへ向かう意識。それが数字(2ゴール、2アシスト)につながったと思います」。3点目を決めたDF石川貴大は、「3位決定戦でも、気持ちの上ではいつもと変わらなかった」という。「3位決定戦はモチベーションが難しいとよく言われますが、決勝だろうが、3位決定戦だろうが、同じ1試合。目の前のこの試合に勝つという気持ちは、いつもとまったく変わりませんでした」

 

バックス藤澤悌史監督は、この3位決定戦を「大切な試合として戦った」という。「3位決定戦はモチベーションが難しい試合と言われますが、自分たちの価値を高めるために、全員でしっかり戦おうと話しました」

「目標は優勝」。どのチームも、どの選手も、そう口にする。しかし、目の前にある試合で得られるのは、あくまで、その試合の勝利だ。そして、目の前の試合の勝利を重ねていった延長戦上に優勝がある。目の前の「この試合」に、どれほど心血を注ぐことができるか。バックスが3位決定戦で勝ったのは、2004年以来17年ぶり。バックスにとってはもちろん、イーグルスにとっても、大きな教訓をもたらした試合だった。

(取材・山口真一)

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