第89回全日本選手権Aグループ・決勝(12月19日・長野ビッグハット)

ひがし北海道クレインズ 6(1-2、4-2、1-1)5 東北フリーブレイズ


年齢を重ねていくと、アスリートはこう呼ばれるようになる。「ベテラン」。経験を生かし、インテリジェントに、スマートに。そんな「いい部分」もあるけれど、時にネガティブな意味合いを含むこともある。動作が鈍くなる。スタミナが続かない。疲労が抜けにくくなる。だが、クレインズのベテランたちはどうだ。なんだかとってもギラギラしている。それでいて「ケンカ」がめっぽう強い。

クレインズのメンバー表を見ると、ベテランの割合がかなり高いことに気付く。43歳になったばかりのDF伊藤賢吾をはじめ、40歳のFW小原大輔、39歳のFW西脇雅仁、35歳のFW上野拓紀。しかし彼らは、老いてはいない。若手を補完するどころか、試合でかなり目立つ活躍をしている。

クレインズは大会を通じて、ベテランが若手にケンカのやり方を教えるように、実にうまい試合運びをした。それをいやというほど思い知らされたのが決勝戦、第2ピリオドの攻撃だった。

ブレイズ1点リードの1-2で迎えた2ピリ。ブレイズは21分、やはりベテランのFW篠原亨太のゴールで点差を「2」に広げる。クレインズとしては、PPを得た状況での痛い失点。しかし、その嫌な流れを1分後、地元・長野出身の上野が変えてみせた。22分、PPらしいパス回しを経てミドルシュートを突き刺し、点差は再び「1」に。これで息を吹き返したクレインズは25分、中堅FWの大津晃介が左レーンをドライブして鮮やかな同点ゴールを決める。

クレインズの「ケンカ」のうまさはここからだった。26分、ジャンプしてきたDF米山幸希が、FW陣からの落としをたたいて勝ち越しの4点目。29分には、相手ゴール前のパス交換にタイミングよく飛び込んだFW池田一騎が押し込み、4連続ゴールで5-3にした。22分の上野のゴールで着火した炎が、若手・中堅のゴールによって燃え盛った、そんな印象を受ける連続得点だった。

 

34分にブレイズFW人里茂樹が得点してクレインズのリードは1点に。しかし3ピリ、またもベテランが存在感を発揮した。42分、西脇がPPを利して6点目。結果的にこのゴールが効いて、6-5でブレイズを振り切った。

 

ブレイズの大久保智仁監督は、クレインズの「ホッケーのうまさ」に舌を巻いていた。「ここぞという時の嗅覚といえばいいのでしょうか。攻め込む時にタイミングよく二番手、三番手が来ることもそうだし、得点を入れるべき時間に入れてくる。そこは昔からのクレインズらしさでしたね」。キャプテンの人里は、クレインズのタイムマネジメントに脱帽した。「うまいなと思ったのは時間の使い方です。前半はシンプルに、試合の中盤、ここという時に集中して点を取りに来る。チームの団結力を感じました。相手チームですが、本当に素晴らしかったと思います」

 

3ピリ序盤、相手に精神的ダメージを与えた6点目を挙げた西脇は、こう言って胸を張った。「ウチは、ゲームの運び方をみんながわかっている。大事な時間帯が来るまで焦らず、時間をうまく進められた。それが今日の勝因です」。

日本製紙アイスホッケー部から、3シーズン前に、ひがし北海道クレインズへ。強いクレインズのDNAは当時在籍していた選手たちを通じて、今もしっかり受け継がれている。

クレインズの優勝。ジャパンカップではダントツのレッドイーグルス北海道の4位。それが、今回の全日本選手権における2大トピックだった。

失点してはいけない時間帯、得点すべき時間帯。敵が怯んだスキに、一気にたたみかける非情さ。それが60分の中で実現できるか否かがトーナメントの明暗を分けるということが、わかりやすい形で現れた。ベスト6の顔触れの中には、伊藤と西脇、さらに上野。チーム名が変わっても、クレインズの伝統は生きている。うれしく思ったファンもいたはずだ。

(取材・山口真一)

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