第89回全日本選手権Aグループ・準決勝(12月18日・長野ビッグハット)

ひがし北海道クレインズ 3(0-0、1-1、1-1、延長0-0 PS戦1-0)2 HC栃木日光アイスバックス


バックスとしては、先行しては追いつかれ…を繰り返すこと2度。最後にPS戦で笑ったのは、「追いついた」を2度繰り返したクレインズだった。優勝した前回大会に続き、準決勝で接戦の末にバックスを破り、ファイナリストの座をつかんだ。

 

アイスバックスとすれば、ほぼプラン通りの試合だった。「セーフティーに」「パック保持の時間を短く」「ディフェンス・ファースト」。負けたら終わり、トーナメントを勝ち抜くための鉄則だ。特にこの日は、Dゾーンでのパックさばきが重視された。ボードを使ってシンプルにパックアウト。戦術理解と遂行に関して、藤澤悌史監督は「選手はリスクのないプレーを徹底してやってくれたと思います」と評価した。

ところが、そこに1つの誤算が生じた。シンプルにDゾーンからパックを出すプレーが、バックスの持ち味である「つなぐホッケー」を消してしまったのだ。

FWの寺尾勇利はこう説明する。「バックスの良さは、自ゾーンから持ち上がって5人が一体となってパスをつなぐところ。それが今日はできていなかったし、途中で修正することもできなかった。試合中、ああ、このままいったら負けるなと思いました」。パックを自分たちでコントロールし、ひいては試合そのものをコントロールするのがバックス本来のスタイル。チップボードでパックを出すのは安全かつ堅実だが、ルースパックの状態が多く生まれる状況では、バックス本来の形はつくれない。

 

加えて、シンプルにパックをさばくことで5人の間の絶妙なギャップが保てなくなった。寺尾は「そこを釧路さん(クレインズ)に突かれました。5人が一体となっていないから真ん中にスペースができて、福藤(豊・GK)選手も守りにくかったと思うし、パスがカットされて決定的な場面をつくられることもありました。今日のホッケーは、バックスのホッケーじゃない。明日もファンの人は来てくれるので、そこでバックス本来のプレーを見せていきたい」。3位決定戦は、ともすれば消化試合のように語られるが、バックスにとっては今季の中でも大切な位置づけの試合になりそうだ。

 


対するクレインズは、60分の間は一度もリードを奪うことはなかった。が、点差を「2」以上に広げられることもなかった。

特に光ったのは、バックス古橋真来にゴールを奪われて1-2とされた46分、その36秒後に追いついた場面だ。1-1の均衡が破れた直後のシフト。バックス藤澤監督を「今日、よくなかったのはゲームマネジメント」と悔しがらせた得点だ。クレインズとすれば、勝ち越し点を奪われてすぐ追いついたことで、チームにエネルギーがよみがえった。

同点ゴールを決めたのは、キャプテンのFW池田一騎だ。「自分で言うのもなんですが、失点してチームが盛り下がったところで、いい流れに戻したゴールだったと思います」。ここ最近、チームの経理上の問題が取りざたされたが、「僕たちはアイスホッケーをするだけだし、優勝するために長野に来た。いろんな感情がありますけど、チーム全員が優勝に向かって1つになっています。試合後のロッカーの雰囲気も、とてもよかった」という。

37分に同点ゴールを決めたのは、営業スタッフの一員でもあるベテランFWの西脇雅仁だった。昨シーズンはケガのために、前回大会はリンクサイドで味方を見守った。「チームは優勝しましたが、自分が出られなかった悔しさもありました。そういう個人的な思いもありますし、優勝することでスポンサーの皆さんに、クレインズのスポンサーになってよかったと思っていただきたい気持ちもある。明日もう1日、テレビ中継がありますし、絶対に勝って、応援したいと思われるチームとしてアピールしたい」

FW齊藤大知がケガで戦列を離れ、もしかしたら決勝は反則のサスペンションで欠場する選手が出るかもしれない(報道への発表はなし)。チーム状況は万全ではないが、GKヤニス・オージンシュがヒザのケガから復帰し、バックス戦では「5段階評価で5以上」(ギルゲンソンス監督)のゴールテンディングを見せた。何より、この大会のクレインズは「アイスホッケー」そのものに夢中になれている。おそらく、今シーズンで今が一番強い状態のクレインズ。全日本連覇が、夢ではないところまで来ている。

(取材・山口真一)

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