▽アジアリーグ・ジャパンカップ後期2回戦(3月13日・ひがし北海道クレインズアイスアリーナ)

ひがし北海道クレインズ 11 (1-0、6-1、4-0) 1 横浜グリッツ


本気を出した。クレインズが。

今季のジャパンカップは、前期が3位で後期は4位。しかし、それが彼らにふさわしい順位ではないことが、今季の最終戦で実証された。

このメンバーで戦う最後のカード。とりわけ17シーズン(途中ECHLデイトン移籍を含む)、チームを支えてきたFW西脇雅仁の現役最後の試合でもあった。素晴らしい内容で西脇を送り出したい。チームメイトの思いが随所に感じられる60分になった。

1ピリから、一方的にクレインズがグリッツのDゾーンをかき回す。13分、クレインズはシュートを連打し、ゴール前のFW大津晃介がフリーでたたいて先制ゴール。1ピリはこの1点のみだったが、シュート数はグリッツの1本に対してクレインズは20本。見方を変えれば、グリッツGK小野航平のセーブが目立つピリオドだった。

2ピリに入ると、クレインズのラッシュが止まらなくなる。25分に米山幸希、29分に松金健太がスコアすると、DFに負けていられないとFW小原大輔、大津晃が連続ゴール。PKで1点を返されたが、34分にルーキー荒木翔伍が初得点。38分にはDF河合龍一がゴールし、このピリオド6得点で早々と勝負を決めた。

3ピリ、クレインズは西脇に「さよならゴール」をとパスを集めるが、スコアリングには至らず。しかし、これはこれでよかった。来季、西脇の背番号11を受け継ぐ大津晃が2ゴール、米山、荒木の2人のルーキーが1ゴール。DF大津夕聖、蓑島圭悟らの頑張りも光った。さらには、ルーキーGK中島康渡が初先発初勝利。安心して後を任せられる、そう思わせてくれた後輩たちのプレーは、西脇にはこれ以上ない「はなむけ」になったはずだ。

ゲームシートの観客数は、前日に引き続いて「0」。1月中旬、釧路の試合でクラスターが発生し、原因究明には至っていないという理由での無観客開催だった。チームの経営不安に関する報道もあり、ファン・サポーターにとっては、この2日間ほどクレインズアイスアリーナが遠くに感じられたことはないだろう。

一方で、クレインズの選手のいいところは、そうした不安要素を氷上に、そして表情にまったく出さない部分にある。海外のチーム、あるいは他の競技であれば、何人かの選手がチームを離れたり、試合を行えない状況になることだってありえただろう。しかしクレインズの選手は、不安や不満をいっとき胸の奥にしまい、チームのため、仲間のためにパックを追った。彼らのそうした純粋さは、間違いなく日本アイスホッケーの宝であるはずだ。

 

試合後の会見で記者に囲まれたキャプテン、FW池田一騎はこう話した。「いいことのほうが少ないシーズンでした。でも、チームメイトと最後まで戦えたのはよかったし、来シーズンにつながると思います。全日本は優勝しましたが、リーグで勝ちきれない。モチベーションの維持という点で、足りない、改善できていない部分があるのかなって。原因は深いところにあるのかもしれませんが、心の中に芽ばえた、もっと強くなりたいという気持ちをもって、来季、戦っていければ」

 

もしかしたら、クレインズの選手を戦いの場につなぎとめたのは、西脇雅仁の引退だったかもしれない。そして1年間の戦いを終えた今、選手も、スタッフも、次に向かって動き出している。あるスタッフは「終わることを前提には動いていませんから」と話してくれた。リーグの戦いは終わったが、釧路にクレインズを残すための戦いは終わらない。

 

取材を終えて鳥取大通に向かうと、日本一美しい夕日が見送ってくれた。製紙工場の煙突から、煙はもう出ていない。釧路の街は、これからどんどん変わっていくだろう。でも、ホッケー観戦を終えて幸せそうな顔でアリーナから出てくる観客を夕日が照らす、その光景だけはいつまでも続いてほしい。だから、何かできることがあれば遠慮なく相談してほしい。取材や報道ではなく、これはホッケーマンとしての約束だ。

 

最後に、11失点の横浜グリッツについて。「西脇にゴールを」という場内の空気に彼らは付き合わなかった。そっちがその気なら、こっちは意地でも西脇にスコアさせない。その思いは、11失点してなお途切れることがなかった。ブザーが鳴るまで貫き通した、トップリーガーのプライド。それもまた、日本アイスホッケーの宝だったように思う。

(取材・山口真一。西脇雅仁選手、清川和彦GMのインタビューは、後日お届けします)

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